福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の真相 第1回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
SFPは燃料プール、DSピットとは機器貯蔵プールのこと。4号機の燃料プールは、定期検査のため、普段は空っぽの原子炉ウェルと機器貯蔵プールにも水が満たされており、通常の2倍近い貯水量があった。 東京電力報告書より

「仕方がない」4号機に向かう作業員の一人は、そう思っていた。4号機の燃料プールの水温が異常上昇しているとはいえ、原子炉が冷却できない1号機から3号機の危機に比べると、危機対応の優先順位は、一段低くならざるを得なかった。点検のため運転停止中の4号機原子炉には燃料はなく、メルトダウンの恐れがないのだ。車に積まれた発電機2台とポンプ2台を見つめながら「この機材が、今、免震棟が出すことができる最大限なのだ」と自分を納得させていた。

NHKスペシャル『メルトダウン取材班』が執筆した近刊『福島第一原発事故 7つの謎』(講談社現代新書)には、吉田所長が生前に遺したとされる「謎の言葉」をめぐるミステリー(第3章)、知られざる放射能大量放出の謎(第4章)など、スクープ情報が満載されている。

全面マスクをかぶり、防護服に身を包んだ5人は、4号機に到着すると、事前の計画どおりタービン建屋の入り口から原子炉建屋に通じる二重扉へと向かった。燃料プールは原子炉建屋最上階の5階にある。二重扉から原子炉建屋1階に入り、階段を上って5階へと進む予定だった。5人のポケット線量計は、8ミリシーベルトを超えるとまずアラームが鳴るようにセットされていた。その後は、4ミリシーベルトを超えるごとにアラームが鳴り、最大80ミリシーベルトまで計測できるよう設定されていた。作業は線量との闘いだったが、原子炉に燃料がない4号機は、メルトダウンの危機にある他の号機に比べ、放射線量は、それほど高くないと想定していた。

しかし、5人が二重扉を開けた途端、すぐに最初のアラームが鳴った。作業員は「えっ?」と思った。なぜ、こんなに放射線量が高いのか。4号機は原子炉が動いていないはずだ。いくら燃料プールの水温が高いといっても、100℃もいっていない。燃料が溶けて放射性物質が発生するような高温では、とてもない。