福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の真相 第1回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
福島第一原発の最悪シナリオがもし起きていれば……近藤駿介内閣府原子力委員長が作成した「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」で明らかになった、最悪シナリオ発生時における移住を迫られる地域。近藤委員長は、最悪時には、福島第一原発から半径170キロ圏内が、土壌中の放射性セシウムが1平方メートルあたり148万ベクレル以上というチェルノブイリ事故の強制移住基準に達すると試算した。同試算では、東京都、埼玉県のほぼ全域や千葉市や横浜市まで含めた、原発から半径250キロの範囲が、住民が移住を希望する場合には認めるべき汚染地域になると推定した CG:DAN杉本、カシミール3Dを用いて作製。高さは2倍に強調している

トラックの荷台には、発電機2台とポンプ2台が積まれていた。5人は、4号機の燃料プールと接している交換機器の貯蔵用のプールに満たされている水をポンプで汲み上げて、燃料プールに注ぐよう指示されていた。4号機の燃料プールは、幅12・2メートル、長さ9・9メートル、深さ11・8メートル。その中に、およそ1400トンの水が満たされていた。

NHKスペシャル『メルトダウン』シリーズでは、これまで5本の番組が放映され、文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞を受賞するなど、内外で高く評価されてきた。2015年1月16日、約3年半にわたる同取材班の調査報道をまとめた『福島第一原発事故 7つの謎』が講談社現代新書より刊行された。事故の時系列の流れを追った同取材班による『メルトダウン 連鎖の真相』と併せ読むと、複雑な巨大事故の全体像がよく理解できる

この燃料プールの隣には、プールゲートと呼ばれる仕切り板に区切られて原子炉ウェルと呼ばれる円筒型のプールがあった。さらにその隣に機器貯蔵プールが接している。原子炉ウェルは、直径11メートル、深さ7・6メートル。機器貯蔵プールは、幅6メートル、長さ15・5メートル、深さ7・6メートルあった。通常は、水が入っていないこのスペースに、このときは、燃料プールとほぼ同じ1400トンもの水が満たされていた。定期検査中だったからである。原発は、定期検査の際、原子炉ウェルや機器貯蔵プールにも水が満たされる。その中に交換用の機器をおさめるためだ。

このことに目をつけた免震棟は、燃料プールから最も離れた機器貯蔵プールの水なら、水温が低いとみられるため、燃料を冷やすのに有効ではないかと考え、ポンプで汲み上げて、燃料プールに注ぐことを考えたのだ。しかし、仕切り板で区切られているとはいえ、燃料プールの水と接している水を冷却用に使うのは、まったくの対症療法である。苦肉の策といえたが、他に対策がなかったのだ。本格的に燃料プールを冷却するためには、原子炉の注水と同じように消防車を使って、海水を注入する必要があったが、原発にある消防車は1号機から3号機の原子炉を冷やすのに使われていたため、4号機プールの冷却用には残されていなかった。