福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の真相 第1回

ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
メルトダウン 連鎖の真相』には貴重な写真や図版、そして事故対応にあたった東京電力技術者の証言がが多数収録されている

副班長が携帯していた線量計は、作業開始から累積で40ミリシーベルトを超えていることを示していた。放射能を帯びた瓦礫が放出する高い放射線量にさらされ続けた結果だった。しかし、屋外での作業を続けるうちに、副班長の胸の中に、高い放射線よりも恐ろしさを感じるものが現れていた。

それは、目の前にそびえ立つ2号機だった。

2号機は、原子炉建屋の壁についているブローアウトパネルが外れ、白い蒸気のようなものが立ち上っている他は、爆発した1号機や3号機と違って、事故前とさほど変わらない姿のまま、そこにたっていた。

その姿が目に入るたびに、爆発するのではないかという不安にさいなまれるようになっていった。

副班長は作業中、次第に、2号機が爆発したら、どうすべきか真剣に考えるようになっていた。今爆発したら、止まったままの消防車に飛び移って、そこに隠れる。今爆発したら、物陰から物陰にダッシュして走る。今爆発したら……。

副班長は振り返る。

「壊れていない2号機が不気味でした。線量は線量計を持っているので、ある意味コントロールできる。しかし、爆発となると、いつどこで、どうなるかわからない。その恐怖感ですね。そして記憶としては音がない。気持ち悪いほどに。それが本当に怖かった」

(第2回へ続く)

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NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
「事故はなぜ起こったのか」「人類は原発を制御できるのか」。福島第一原発事故から2年が経ったにもかかわらず、いまなお多くの謎が残され、事故の検証作業はまだ途上にある。NHKでは、原子力問題に精通した取材記者、番組制作者からなる取材班を結成し、400人以上の関係者に取材、各種事故調でも触れられていない独自の視点で多角的に事故を検証した。本書は、NHKスペシャル『メルトダウン 福島第一原発あのとき何が』(2011年12月18日放送)、『メルトダウン 連鎖の真相』(2012年7月21日放送、第67回文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞)、『メルトダウン 原子炉「冷却」の死角』(2013年3月10日放送)で取材した関係者の証言や記録をもとに、書籍として再構成したものである。