医者も人間です! 医者を本気にさせる患者と家族の「技」

あなたは適当にあしらわれていませんか
週刊現代 プロフィール

そう話す前出の平岩医師は、ある患者に出会ったとき「この人のためにはどんな努力も惜しまずにやろう」と決意したという。進行子宮がんを患った大阪在住の60代の女性だった。

「その方は大阪で治療をしていたのですが、そこで『もう治療法がない』と言われ、娘さんと小さなお孫さんと一緒に私のいる病院(茨城県)へ来たんです。大阪での仕事だけはなんとか続けたくて、そのためなら何でもやるとおっしゃった。子供を抱いた娘さんからも『どうか母を助けてください』と頭を下げられました。

私は、彼女のために治療計画を立てました。そのときの病状に合わせて数週間続けて治療し、落ち着いたら大阪に帰るという方法です。1年以上続く見込みだったので、こちらで入院する間、娘さんはホテルを借り、お孫さんが通う幼稚園まで病院の近くで探して、患者さんを支えていました。

その姿を見ていたら、何としても願いを叶えてあげたいとの思いが日に日に強くなっていきました」

大阪の病院で「治療法がない」と宣告されてから3年。彼女は希望どおり、亡くなる間際まで仕事を続け、家族に見守られながら穏やかに息を引き取った。「治療をしていなければ数ヵ月の命だった」と平岩医師は振り返る。

医者を本気にさせるには、患者だけではなく家族の行動も重要となる。医者と面会する際は、家族はできる限り同席したほうがいい。医者も家族の顔や様子がわかれば、「患者だけでなく家族のためにも頑張らなければ」と思うからだ。

とくに脳卒中などで本人が意思表示できない病状の場合は、家族のふるまいが病気の予後を左右するといっても過言ではない。前出の脳神経外科医は、こう打ち明ける。

「脳卒中など突然発症した病気の場合、ご家族も動揺されて当たり前ですが、号泣されても、なだめるのに時間がかかって何も情報が得られなければ、正直なところ面倒です。逆に、大変な状態でも気丈にふるまわれるご家族には、真剣に対応しようと思います」

この医師は、1年前、脳梗塞を発症して意識を失った夫に付き添ってきた50代の女性が強く印象に残っているという。

「奥さんは動揺で声が震えていましたが、倒れる前の状況や病状と時間の経過をメモに書き出しながら、必死に説明してくれました。

数日後、状況が落ち着いてから『10分でいいのでお時間をいただけませんか』と言われ、旦那さんの病歴や生活習慣、仕事の内容などを細かに記したノートを渡されました。『主人は仕事だけは続けたいと言うと思います。なんとかパソコンが使えるようにしてあげたい。そのためにできるリハビリを教えてください』と。頭の下がる思いでした」

忙しい医者の状況を考慮しながらも、治療を全力で支えたいという思いを伝える。その姿勢に、医者とリハビリ担当スタッフは真剣にならざるを得なかった。

家族の場合とくに、「自分がでしゃばっても忙しい医者に迷惑がかかるのでは」と遠慮してしまいがちだが、その必要はまったくない。

「医者と患者、その家族は対等な関係です。『患者の状態を改善する』という同じゴールを目指す仲間だと考えてほしいですね。医者は患者の病状を良くするのが仕事なのですから、患者の情報はできるだけほしい。患者の趣味や家族構成、性格なども、治療に有益な情報になることもありますから」(前出・北原医師)

ただし、地位や知識をひけらかすと逆効果になる。

「よく『自分の親戚は医者だ』などと威圧してくる患者や家族がいます。その場合、何か手落ちがあれば突っ込まれるので慎重にならざるを得ませんが、型通りの対応しかできず、効果があるとは言えません。

『だったらその医者に診てもらえよ』と思いますし、こっちも気分は悪くなります」(都内の大学病院・消化器内科医)

医者がグッとくる一言

ちなみに、医者にカネを包むのは意味があるのか。現在は謝礼を受け取らないと公表している病院がほとんどだが、都内の某私立病院の外科医は内情を明かす。