医者も人間です! 医者を本気にさせる患者と家族の「技」

あなたは適当にあしらわれていませんか
週刊現代 プロフィール

「医者の話を録音」はアリか

標準治療がいいと言っても、人間の身体は千差万別。前出の平岩医師は、「手間暇をかけて患者一人ひとりに合った細かなフォローをすれば、確実に治療効果は上がります」と断言する。医者が全力を尽くして時間と労力をかけてこそ、その人に合った「最高の医療」は実現する。

では、自分や家族が患者になったとき、医者を本気にさせて最高の治療を受けるにはどんな方法があるか。まずは、東京都に住む坪井達昭さん(仮名・62歳)の例を見てみよう。

坪井さんは、昨年人間ドックで心臓に異常が見つかった。ドックを受けたクリニックで紹介状を書いてもらい、大学病院を受診。現在の症状などをまとめて書いたものを医師に渡し、そのうえで精密検査を受けた。

「その結果、ペースメーカーを入れる手術を受けたほうがいいと言われた。専門的な知識がなくて不安だったので、レコーダーを持参して先生の説明を録音させてもらいました。その後、自分なりに勉強して、次の診察のとき、訊きたいことをメモに書いて持っていきました」

坪井さんが知りたかったのは以下の3点だ。仕事は何日くらい休むことになるか、術後はこれまでと変わらない生活を送れるか、他に治療法の選択肢はないのか。その質問をぶつけると、医師は丁寧に答えてくれた。結果、最初に提案された手術を受け、予定より早く退院し、仕事に復帰。いまは、心臓の手術を受けたとは思えないほど元気に過ごしている。

坪井さんは「本気を出す患者」の枠に入ったようだ。彼の行動には、医者が力を尽くそうと思うポイントが四つ含まれている。

まず一つ目は、最初に受診したクリニックで紹介状を書いてもらったことだ。よく言われることだが、どんなメリットがあるのか。

「患者を紹介されるのは、要は自分が評価されて指名されているということですから、期待を裏切ってはいけないと気合が入ります。知らない医師からの紹介でも、良い結果が出ればまた患者を送ってもらえるチャンスだし、何か不手際があれば自分の評価が下がることになりますから」(都内大学病院・心臓外科医)

直接病院へ行っても診察はしてもらえるが、紹介状があるのとないのとでは、医者が感じるプレッシャーは大きく違うのである。

二つ目のポイントは、症状などをまとめたレポートを用意したこと。これは、患者本人が意思表示できなければ、家族が作るのも有効だ。東京慈恵会医科大学附属病院ペインクリニック診療部長・北原雅樹医師は、次のように話す。

「症状の経過や、何をどうしてほしいのかということをA4で1枚程度に書いてきてくれると非常にありがたいですね。外来では多くの人を診るので、医者は、限られた時間の中で効率よく患者さんのことを知りたいのです」

「患者とその家族には、プレゼン力が重要」と北原医師は言う。仕事でも、短時間で要点を押さえて話をする人は、周囲の評価も高いはず。それと同じだ。自分だけはゆっくり話を聞いてもらいたいと粘るのは逆効果。患者や同席する家族は、医者と貴重な時間をシェアしている、という意識を持ったほうがいい。

三つ目は、医師の説明をレコーダーで録音したこと。医者に嫌がられそうな行為だが、患者の真剣さが伝わって好印象だという。

「自分の腕に自信がある医者なら、録音は嫌がりません。説明したのに、覚えていなくて同じことを訊かれるよりずっといい。『きちんと理解するために録っておきたい』と言われれば、こちらも気持ちが引き締まります。熱心な人とそうでない人では、医者の対応はまったく違ってくるでしょうね」(前出・平岩医師)

そして四つ目のポイントは、質問メモを用意しておいたことだ。これは、前述した「プレゼン力」と同じ。このとき医者の本気度を上げるためには、いくつかコツがあるという。前出の増田氏がアドバイスする。

「質問は優先順にA4サイズ程度の紙1枚に書き、メモを医者に見せながら話をしてください。そうすることで、『この患者(あるいは家族)は今日これを聞きたいのだな』とわかるので医者は安心するんです。

そして、質問の数は多くて5つまで。診療時間内に5つ以上のことを丁寧に答えるのは難しいです」

家族が泣いても時間のムダ

最高の治療をしてほしいと望んでも、そう思っているだけでは意味がない。

「医者は頼まれもしないことはやりません。標準治療以上のことをして何かあったら、責任を取らなくてはいけませんから。希望するなら患者やその家族が熱意をもって伝えるべきです」