この本では、エネルギーの利用を方向づけている科学の法則やその活用のための知識、宇宙全体のエネルギーの歴史などを紹介していきます。
科学の知識になじみのない読者にもわかりやすいように、本書ではエネルギーの科学的な扱いに必要な言葉の定義や必要な法則、エネルギーのさまざまな形、そしてその貯蔵や輸送などを説明し、物理学と化学、そしてほんの少しの生物学的な内容にも触れることにします。
第1章では、ニュートン力学における仕事と力学的エネルギーの概念、熱力学の重要な2つの法則、つまり、エネルギーの保存則と、エネルギーのすべてを利用することはできないということについて紹介します。そして、アインシュタインの有名な方程式E=mc2に関係したエネルギーについても説明します。
第2章では、最もよく使われるエネルギーの形である、電磁波を含む電気エネルギーと、燃焼および光合成という形の化学エネルギーについて説明します。蒸気機関が産業革命をもたらしたのは事実ですが、こんにちの私たちにとって、最も身近なのはガソリンやディーゼル燃料によるエンジンですから、それらについても述べましょう。
第3章では核エネルギーの利用、核分裂と核融合について説明します。核融合は、地球上におけるすべての生命の活動を可能にしている、太陽から放射されるエネルギーの源です。
第4章では、エネルギーに関連した原子レベルの現象や、光を含む電磁放射において重要な量子力学の役割を紹介します。
第5章では、石炭や石油、天然ガスといった化石燃料としての長期間のエネルギーの貯蔵や、電池、水素、燃料電池などによる短期間の貯蔵などについて解説します。この章では、送電線やレーザービームによるエネルギーの輸送、高電圧で送電する理由や、交流が広く使われているわけにも触れます。
最終第6章では、宇宙の歴史のはじまりにおけるエネルギー、すなわちエネルギーの最初の「純粋な」形と、そこからすべての物質が生成されていくプロセスについて記述します。
読者のみなさんには、本書を通じて「エネルギーの科学」の基礎を理解し、核のエネルギーをわずかな例外として、地上で利用しているほとんどすべてのエネルギーの源が太陽であることがわかっていただけることでしょう。