前田日明 第3回
「ひねくれた自分を温かく育ててくださった山本小鉄さんは、まさに"親"のような存在でした」

島地 勝彦 プロフィール

前田 でも行儀悪いことを言ったりやったりすると、すぐにバチーンと殴られて、「お前、なんてことをいうんだ!」とか「なんてことをするんだ!」って怒られました。それでも懲りずにまたやると、今度はバーンと椅子が飛んできました。その後、小鉄さんの付き人になったんですが、とにかく自分をひとりの人間としてイチから矯正してくれたのが小鉄さんでした。

ヒノ 前田さんのデビュー戦の相手も小鉄さんにしてもらったそうですね。

前田 そうなんです。自分はなにをするかわからない危険な新人でしたから、誰も選手が立候補してくれなかったんです。見かねた小鉄さんが「じゃあ、おれがやるよ」と言ってくれたんです。そして小鉄さんはその試合のために毎日2,3時間スクワットをやっていました。

シマジ 血の繋がった親以上の関係ですね。

ヒノ 前田さんは小鉄さんのお通夜のとき、夜通し蝋燭の灯を絶やさないためにそばについているつもりで、着替えのシャツをいっぱい持って行かれたそうですね。

前田 はい。突然お亡くなりになりましたから、なんとなく実感が薄いんですが、いまでもときどき小鉄さんのことを思い出しては「そういえばあんなことを言っていたな、こんなことを言っていたな」とこころのなかでリピートしています。

この間も若い選手たちと話していたとき、「おれの若いときはこんなことを言われて育ったんだよ」と言ったあとで、「あっ、そういえばこれは小鉄さんに言われたことだったな」と思ったりしましたね。

シマジ それをむかしの人は「居ますが如く」と言っていたんですよ。

前田 居ますが如く。いい言葉ですね。すみません、ヒノさん、ネスプレッソのお代わりをいただけませんか。しゃべりすぎで喉が渇きました。

ヒノ どうぞ、どうぞ。

〈次回につづく〉

 

前田日明 (まえだ・あきら) 1959年、大阪府生まれ。 幼少期より、少林寺拳法や空手を習う。1977年に新日本プロレスへ入団し、山本小鉄戦でデビュー。その後、プロレス団体UWF、世界初となる総合格闘技団体リングスを旗揚げし、プロレス・格闘技業界に新風を吹き込む。1999年、アレクサンダー・カレリン戦で現役を引退。HERO'Sでスーパーバイザーを務めた後、2008年、第2次リングスをスタート。青少年育成のためのイベント「The Outsider」をプロデュースする。読書家、日本刀収集家、刀剣鑑定家、骨董収集家としての側面も持ち、プライベートでは一児の父として育児にも奮闘中。『真剣勝負』(共著 草思社)、『誰のために生きるか』(PHP研究所)、『パワー・オブ・ドリーム』(角川書店)、『格闘王への挑戦』(講談社)、『無冠』(集英社)など著書多数。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンティックな愚か者』(いずれも講談社)『Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である』(阪急コミュニケーションズ)など著書多数。Webで「乗り移り人生相談」「Treatment & Grooming At Shimaji Salon」「Nespresso Break Time @Cafe de Shimaji」を連載中。最新刊『お洒落極道』(小学館)が好評発売中!

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