安倍内閣の「本質」を読み解いた
ベテランジャーナリストが明かす
報道番組の「内幕」と定年後「再雇用」記者の意地

田崎 史郎

〝政治の天才〟と言える田中角栄元首相と会って話したことがある政治家も記者も、ほとんどいなくなった。政治記者は政治家を通じて、多くのことを学ぶ。田中元首相を上回る人物にその後出会うことはなく、彼を通じて学んだことが私の財産となった。ほかに梶山静六元官房長官、小沢一郎生活の党代表らから多くのことを教えていただいた。

今、菅官房長官と親しくしているのは、拙著で記したとおり、梶山氏からいただいたご縁だ。安倍首相とは、第1次政権の退陣から約1年後の2008年11月から3ヵ月に1回程度、定期的に会合を開いていたことが今につながっている。石破茂地方創生担当相は私が田中派を担当していた時、田中派の事務所に勤め、まだ政治家の修業中の身だった。

彼らと、自民党が野党時代も含めて1ヵ月に1回程度は会っていた。安倍さんが首相に返り咲くと思ってお付き合いを始めたわけではない。むしろ、返り咲くとは思っていなかった。しかし、会って話していると、話に膨らみがあり、興味が尽きることはなかった。長年、培ってきた人脈が今、政権の中枢に位置していることは幸運に恵まれたというほかない。

政治記者の使命

政治取材はかなり閉ざされた空間である。政治を語り、書くのは政治記者か、政党事務局、秘書出身者に限られている。国会や議員会館を自由に回るには、国会が発行する記章と写真入りの帯用証が必要だからだ。この2つは報道機関と政党、議員秘書に限って渡され、これがないと取材現場にアクセスできない。

議員会館には、議員のアポイントを取って会館受付で手続きをすれば入れる。しかし、国会内には立ち入れない。私たちは記章と帯用証を衛視に示すだけで入ってどこでも取材できる。私が詰めている国会記者会館は地下廊下で国会、議員会館と結ばれていて、雨の日も濡れずに数分で取材ポイントに行ける。これはカネで買えない特典である。だからこそ、知り得た話をできるかぎり伝えなければならない使命を私たちは負っている。

私はこの6月で、定年後再雇用制度が切れる。でも、肩書きは多少変わっても会社との関係を保ち、引き続きアクセス権を維持する予定だ。しかし、これからの私の課題は、引き際を間違えないようにすることだと思っている。

本を書こうと思い立ち、講談社の知人に話を持ち掛けたのが昨年5月のことで、ただちに賛同を得られ新書の担当者を紹介していただいたのが同16日のことだった。その頃、こんなにしっかりした本を書けるとは思っていなかった。

6月にどう書こうかと考え始めて、基本となるデータを集め、7月に安倍首相や菅官房長官らにインタビューした。8月から一気に書き始めた。自分で自信が持てるほどの完成度に達したのは校閲担当者の力に負うところが大きい。事実関係の確認が甘かったところなどを見事に指摘してくださった。誤りを指摘した校閲ゲラを見ながら何度も、「参りました。降参です」と心の中でつぶやいていた。