安倍内閣の「本質」を読み解いた
ベテランジャーナリストが明かす
報道番組の「内幕」と定年後「再雇用」記者の意地

田崎 史郎
田崎 史郎(たざき・しろう) 1950年、福井県坂井郡三国町(現坂井市三国町)生まれ。中央大学法学部卒業。73年4月、時事通信社入社。経済部、浦和支局を経て79年から政治部。82年4月から自民党田中派を担当。政治取材は35年に及び、現在も自民党はじめ民主党、公明党、維新の党などを幅広く取材。同社編集局次長、解説委員長などを経て現在、解説委員。著書に『竹下派 死闘の七十日』(文春文庫)、『梶山静六 死に顔に笑みをたたえて』(講談社)、『政治家失格 なぜ日本の政治はダメなのか』(文春新書)。民放の報道・情報番組に多数出演。

安倍政権になって、政権に対するメディアの評価が極端に分かれるようになった。評価は記事の扱いにも影響している。同時に、自分が取材して知っていることが報道されず、本来、真相を抉るのを売りにしている月刊情報誌「FACTA」などで私が見て明らかに間違っている政治記事が目に付くようになった。ならば「自分が書くほかない」と思ったのが執筆の大きな動機だった。評価する前に、私が見た真実を伝えようと思った。

拙著を読んだ元国会議員からこんな感想をいただいた。

「世の中、安倍政権に対して『思い込み』と『思い込み』の対決で、いくら話しても結論が出ない。そこへ、田崎さんはリアルなファクトを提供された」

「田崎さんが安倍総理と食事したことがネットで騒がれていますが、気にする必要はまったくありません。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ですよ」

拙著を読まれて私の意図、取材姿勢を理解していただけたことに驚いた。ほかにも「総理への苦言も呈している。安倍政権のことをこれだけしっかりと書いた本はない」(首相秘書官)という過分なお褒めの言葉をいただいた。自分でどんなに良く書けたと思っても、編集担当者と共鳴し合っても、本の価値を決めるのは読者である。読者の感想と、本の売れ行きが書いて良かったという達成感につながっている。

こうした、じわじわと広がっていく満足感は、残念ながらテレビでは得られない。テレビは一瞬の勝負であり、話し終わった段階で消えていく。あの話が面白かったと言ってくださる視聴者もおられるが、ごく稀だ。

田中角栄を直接知る記者もいなくなった

64歳になっても、現場の若い取材陣の向こうを張って戦えるのは、政治記者が経験と長年の付き合いを取材に活かせる職業だからだ。政治部に配属された1979年4月から一貫して政治を追い続けている。取材歴36年近くになるが、この間に79年9月の第1次大平内閣における「一般消費税解散」以来、衆院解散・総選挙が13回行われた。現職の衆院議員475人中、当選回数が13回を超えているのは小沢一郎、亀井静香氏ら6人しかいない。この体験において、現場の記者に負けることはない。