安倍内閣の「本質」を読み解いた
ベテランジャーナリストが明かす
報道番組の「内幕」と定年後「再雇用」記者の意地

田崎 史郎

自分の足が動かなくなって情報を取る努力を怠るようになったら、言い換えると、他の記者が取った情報で話すようになったら、自分は身を退こうと決心している。

拙著でも、自分で取材したものを書くという原則を貫いた。そもそも、私自身は今、所属する時事通信社政治部の「情報メモ」を読める立場にない。読者、視聴者の方にはまったく分からないことだが、政治記事の大半は、この情報メモの集積によって成り立っている。

各新聞・通信社の政治部員は官邸、各政党担当に限るとデスクを含め40人前後(省庁担当を除く)、テレビ局はその半分以下のところが多い。政治部記者は取材結果を各記者クラブのキャップに口頭で報告した後、情報メモを作成する。キャップはそれを基に記事を書く。情報メモを読んでいれば、政界で起こっていることのほとんどを知ることができる。

私も、解説委員長を務めていた10年6月まではこのメモを読める立場だった。しかし、定年となり、同年7月以降は「定年後再雇用制度」を利用して解説委員として活動するようになった。会社での身分は「社員」ではなく「嘱託」だ。嘱託になって以降、メモを読めなくなった。政治部員に対して指示することもできなくなった。

報道各社の政治記者を合計すると400人を超す。彼らを相手にして、彼らを上回る情報量を手にしようとするのはかなり無謀なことだ。だが皮肉なことに、情報に対して本当に強くなったと感じられるようになったのは、定年後だと思う。

テレビで話したり原稿を書いたりする情報の「アウトプット」に必要な「インプット」を、現場の記者の情報メモに頼らずに自分1人で行うほかなくなった。会議の予定や、記事の根拠などについて聞くことはあるが、アウトプットの材料はほとんど自前の情報に基づいている。

虎穴に入らずんば虎子を得ず

このために、首相官邸はもちろん、各政党の議員、事務局の人たちと普段からよく会っていて、いざとなったら電話ですぐ話を聞くことができる関係を維持している。『安倍官邸の正体』でも触れた、首相官邸の司令塔の役割を果たしている、安倍首相を中心とした「正副官房長官会議」、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致運動の際に生じた官邸と宮内庁の葛藤などは、この取材の過程で得たことだ。