特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【後篇】

格納容器圧力異常上昇

全電源喪失から8時間あまりたった午後11時50分。

バッテリーによる計器の復旧が進み、これまで確認できなかった1号機の格納容器の圧力が見えた時だった。数値を見た運転員が、驚いて声をあげた。

「ドライウェル圧力確認。600キロパスカル!」

600キロパスカル。6気圧。通常の格納容器圧力の6倍もの値だった。設計段階で想定している最高圧力の5・28気圧を上回る異常上昇だった。1号機の異常はすぐに免震棟に伝えられた。この時になって初めて、吉田は、ICが作動していないことに気がついた。格納容器圧力の異常上昇。それは高温高圧になった原子炉から大量の放射性物質を含んだ水蒸気が格納容器に抜け出ていることを意味する。すると原子炉は冷却されていない。すなわちICは動いていない。原子炉の中で核が放つ膨大なエネルギーが引き起こしている現実に、ようやく人間の考えが追いついた瞬間だった。この時のことを、吉田は、「設計気圧超えているじゃないかと、どうするんだと、ベントしかないだろうというのが、だから、指示としては、ここからなんです」と証言し、この段階に至って、初めて格納容器の圧力を外部に放出するベントを指示したことを明らかにしている。

取材班が専門家と行った原子炉のシミュレーションでは、午後11時46分には、燃料棒を覆うジルコニウムという金属が溶け始め、メルトダウンが始まり、翌12日午前1時6分には、燃料そのものも溶け始めたと推定されている。格納容器圧力の異常上昇が判明した時には、1号機の原子炉は、急激なスピードでメルトダウンに突き進んでいるところだった。

吉田らがベントの準備に着手したのは12日午前0時前後。ICが停止してからすでに8時間が経過していた。初動の遅れは致命的だった。

「サ ンプソン(SAMPSON)」を用いたシミュレーションによれば、3月12日午前1時6分にはウランペレットの溶融が始まった。一方、免震棟が懸念してい た2号機はこの時点では冷却ができていた CG:NHKスペシャル『メルトダウンⅠ ~福島第一原発 あのとき何が~』

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