特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【後篇】

原子炉水位計の構造 原発の水位計は、直接水位を測るのではなく、原子炉とつながっている金属製の容器(基準面器)を使って水位を計測する。容器の中には原子炉の水位を測るのに必要な一定量の水が常に入っているはずだった図:東京電力報告書

それなのに、なぜ水位計は誤った数値を示したのか。理由は水位計の構造にある。原発の水位計は、直接水位を測るのではなく、原子炉と直接つながっている金属製の容器を使って水位を計測する。容器の中には原子炉の水位を測るのに必要な一定量の水が常に入っている。この水が水位計の「基準」となる。実は、1号機では原子炉が空だきになった結果、容器が高温になり、「基準」となる水が蒸発してしまったのだ。このため、水位が正しく測れなくなっていたのである。さらに「基準」の水が減ると、原子炉の水は変化していないにもかかわらず、水位を示す表示は上昇していく。

1号機の原子炉水位計は誤っていた。しかし、吉田以下、免震棟の幹部は、この時点で、そのことに気がついていなかった。ICが動き続けていると考えていたからだ。ICが作動していれば、水位は一定程度維持される。水がなくなって原子炉が高温になって、水位計の「基準面器」内の水が蒸発している可能性に、とても考えがいたらなかったのである。

一方、中央制御室の運転員たちは、午後6時台の緑のランプの点灯や一連の操作を踏まえて、水位計の値を疑い始めていた。ICは機能していないと認識していたため、水を入れていない原子炉の水位計が上昇し続けたことを疑問視し始めたのである。

このころ、運転員がホワイトボードに書き記した記録には、 「水位計、あてにならない」という文字が残っている。しかし、このほかに、原子炉の状態を示す客観的なデータはなかった。水位計の値を頼りにするほかなかったのである。

「今にして思うと……」吉田は、自嘲気味にこう語っている。「この水位計をある程度信用していたのが間違いで」「そこを信用し過ぎていたというところについては、大反省です」。こうして最後のチャンスも失われてしまったのだ。

柏崎刈羽原子力発電所にある水位計。福島第一原発でもこれと同じタイプの水位計があった 写真:NHKスペシャル『メルトダウンⅠ ~福島第一原発 あのとき何が~』

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