特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【後篇】

福島第一原発1号機の中央制御室。事故当時は照明や操作盤の電光表示も全て消えた状態だった 写真:東京電力

「イソコン、起動しよう。2A弁、3A弁とも開!」

当直長の指示が担当者によって繰り返され、運転員がレバーを操作する。

「開にしました。イソコン起動確認」

「了解。時間18時18分!」

ランプは緑から赤に変わる。1号機の原子炉を冷却するICが、全電源喪失した午後3時37分から約2時間半経ってようやく起動した。

当直長は、免震棟へのホットラインで、ICの弁を開いたことを報告した。さらに、別の運転員に、外に出て1号機の原子炉建屋の「ブタの鼻」から蒸気が発生するか確認するよう命じた。中央制御室の非常扉から外に出ると、1号機の原子炉建屋越しに排気口は直接見えないが、蒸気が勢いよく出れば、見える位置にあった。

建屋の外に見回りにいった運転員が急いで帰ってくる。その報告は、最初は勢いよく出ていた蒸気が、ほどなく「もくもく」という感じになって見えなくなったというものだった。

当直長は、ICのタンクの冷却水が減り、蒸気の発生が少なくなったと考えた。タンクの中の冷却水がなくなると、空だきとなるため、ICの配管が破損し、高濃度の放射性物質が外にもれる恐れもあるのではないか。中央制御室は重大な決断に迫られる。

「イソコン運転続けますか?」

「いったん3A弁閉にしよう」

午後6時25分。当直長は、ICの弁を閉じるよう指示をした。制御盤のランプは赤から緑に変わった。ICは、わずか7分後、再び停止した。1号機で唯一動かすことができた冷却装置ICは、再び動きを止めた。

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/