特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【後篇】

錯綜した情報で混乱を極めた免震棟 写真:東京電力

午後5時50分。その二重扉を開けようとしたところだった。持っていたガイガーカウンターの針が振り切れた。

2人は顔を見合わせた。「なぜ、この場所で?」

二重扉は放射線もかなり防ぐ。通常、扉の外でこうした線量が測定されることはない。しかも、2人は、このときはまだ防護服や防護マスクを装着していなかった。さらに線量計もなく、どの程度の放射線量なのか、正確な数値はわからなかった。2人は、確認作業を諦め、中央制御室に戻るしかなかった。

11 日夕方、一部の直流電源が復活し、ICの戻り配管隔離弁(MO-3A)、供給配管隔離弁(MO-2A)の表示ランプが点灯していることを中央制御室の運転員が発見した。点灯状況を確認したところ、弁が閉まっていることを意味する緑色表示だった 写真:NHKスペシャル『メルトダウンⅢ 原子炉〝冷却〟の死角』の再現ドラマより

午後6時18分。中央制御室の制御盤の前に運転員たちが次々と集まってきた。1号機のICの弁の状態を示すランプが、うっすらと点灯しているのに気がついたのだ。

午後4時40分台に続いて津波で海水をかぶったバッテリーの一部が何らかの原因で復活し、一部の計器やランプが再び見えたのだ。

ICのランプは緑に光っていた。緑は、弁が閉じていることを示していた。ICの配管の途中の弁が閉じているということは、蒸気は流れを止めていて、ICは動いていないことを意味した。

この時点で、中央制御室の運転員たちは、初めて、ICが止まっていた可能性があることに気がついたという。当直長や運転員は、バッテリーの電源が失われたとき、ICの弁が自動的に閉まる構造になっていたことに思い至ったのだ。取材に対して運転員の一人は「ICは、バッテリーがなくなると、電気信号が出て止まることは知っていた。そのときの雰囲気は、ICは止まったなという感覚だった」と話している。

吉田が証言していたように、1、2号機の運転員は、ICの仕組みに詳しく、フェールクローズの仕組みを知っていたのである。当直長は、ICを動かそうと、担当の運転員に制御盤のレバーで、弁を開くよう指示を出した。

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