「戦後70年」特別鼎談 児玉誉士夫 笹川良一 瀬島龍三 四元義隆ほか「黒幕たちの戦後史」を語りつくす 保阪正康×佐高信×森功

週刊現代 プロフィール

その後、私の肩に手をかけて「フリーの物書きとしてやっていくのは大変だろう。僕のところにはいろいろ情報が集まるから遊びにおいで」なんて優しい声をかけられましたが、そういう人たらしの術もあった。もちろん、私は遊びには行かなかったけれど……。

佐高 自分の虚像をうまく作り上げるのも黒幕の条件の一つですね。その場、その場で演技をするというか、平気で嘘をつける能力です。これは官僚にも通じる能力です。

許永中は「黒幕」か?

森 虚像という意味では、四元義隆の自宅を訪ねたとき、面白い経験をしました。四元は'32年の血盟団事件で逮捕された右翼で、戦後は政界の黒幕として、特に中曽根政権や細川政権では陰の指南役と言われるほど影響力をふるった人物です。私は、細川首相との関係を聞きに鎌倉の自宅を訪れたのですが、障子越しにしか話をしないんです。相当お年を召していたというのもあったと思いますが、面と向かっては話せないということでした。

佐高 そうやって、顔を見せないところも黒幕らしい演出かもしれない。

四元といえば、田中清玄の会社だった三幸建設工業の社長を引き継いだ人物ですね。田中も代表的な黒幕の一人だと思いますが、右翼出身の人たちと違って、戦前は非合法時代の日本共産党の中央委員長を務めていた。獄中で天皇主義者に転向していますが。

森 戦後は実業家として建設業や農業に乗り出します。全学連に資金を提供したり、インドネシアやアブダビで石油の輸入、油田開発にまで関わったりするなど、まさに黒幕と呼ぶにふさわしい幅広い活動ぶりです。

暴力装置という意味では、山口組三代目組長の田岡一雄と親しかった。住吉会と親しかった児玉と対立していたというのもあると思いますが。

保阪 最近の黒幕というと誰になるんでしょうね。

森 例えば許永中は最後の黒幕みたいな呼ばれ方をしますが、今まで挙げた人たちとはちょっと異質ですね。

佐高 確かにカネは動かしているけれど、政治を動かすまではしていない。そういう意味でスケールの大きい黒幕はいなくなった。

森 許は、大谷貴義という宝石商や、画商として政界に食い込んだ福本邦雄なんかとつながって政界とのパイプを作った。

佐高 それがやがて戦後最大の不正経理事件といわれるイトマン事件につながっていくわけです。絵画や骨董、宝石といった値段があってないようなものは、裏金を作るのに便利なんでしょう。