「ハンセン病の差別撤廃、若者に託す」---全療協・森和男会長

池田 真隆

差別・偏見をなくすためには10倍もの時間をかけないといけない

細川高頌さん(横浜国立大学教育人間科学部3年)は、1996年に強制隔離や従業・外出などを禁止し、患者の人権を侵害した「らい予防法」が廃止されたが、今、療養所で抱える課題はないかとたずねた。

森会長は、国の誤った政策に対する謝罪と退所後の支援が何もないことについて問題を指摘した。「いきなり、『法律がなくなりました。今日からみなさん、自由に帰ってもいいですよ』と言われても、50~60年隔離されていたほうとしては、どうすることもできない」。

帰るふるさともなく、家族との絆も断絶している。1929年からの「無らい県運動」で、各県が競い合うように患者たちを強制的に入所させるなど、患者の家族は村八分にあったため、縁を切られてしまったのだ。

年齢的に若くて、社会復帰を希望する人には、わずか100万円ほどの支援金がでるだけ。職探しをするためには、運転免許も必要だし、なにより住むための家賃も払わなければいけない。

ハンセン病の差別撤廃について、若い人に期待することは何かと聞いたのは、五十嵐啓太さん(早稲田大学商学部3年)。森会長は、「誤った隔離政策で植えつけられた差別・偏見をなくすためには、それが生まれた10倍もの時間をかけないとなくすことはできない。ぼくらの平均年齢は83歳で、残された時間は少ないけど、最期まで差別が世界からなくなるように努力しなければいけないと思っている。ぼくらの努力を若い人には受け継いでほしいし、それを期待している」と伝えた。

森会長への取材時間は予定時間30分を大幅に超す、1時間となった。森会長が高松市沖の離島大島にある国立ハンセン病療養所「大島青松園」に入所したのは1949年で、まだ9歳のころ。それまでには、お米やお水を恵んでもらうために、隣近所に頼み歩いていたことで、「遍路」ではなく「遍奴」とも言われ、見下されて過ごした。

ハンセン病は遺伝もしないし、感染力も弱いことが確認されている。1980年に効果的な治療法が発見され、医学的には解決の方向に進んでいる。しかし、約50年に及ぶ国の誤った隔離政策によって、差別は根強く残っている。

ハンセン病の差別撤廃を訴える啓発サイト「THINK NOW ハンセン病」では、1月27日のグローバルアピールに向けて、著名人や文化人をはじめさまざまな人からのメッセージ動画を集めている。


 (取材・構成/オルタナS副編集長池田真隆)  

「いまここ」に若者視点をプラスするエシカルメディア「オルタナS」の記事より一部編集・掲載)