最終決定! 立派だった日本人(1945年~2015年)ランキング&第一位スペシャル・インタビュー——我々を励まし勇気づけてくれたのは、この人たちだった

週刊現代 プロフィール

現代の経営者からは、柳井正さんの名前を挙げておきたいですね。地方の洋品店から出発し、いまや2020年に売り上げ5兆円を目指すという、そのスピード感とスケール感は素晴らしい。雇用のやり方など、批判もありますが、私は立派だと思います。

立川談志を加えたい

4位の美空ひばりをはじめ、ランキングに名前の挙がったスポーツ選手や芸能人は、長嶋さん同様、いずれも日本人を元気にしてきた人たちです。

横浜の魚屋の看板娘からスターになった美空ひばりは、その抜群の歌唱力によって、敗戦で打ちひしがれた人々を勇気づけました。美空ひばりがジャズを歌ったレコードがありますが、音程が完璧で、いま聴いても本当にスゴい。『悲しき口笛』から『川の流れのように』まで、その歌声は今も日本人の耳に残っています。

男優からは渥美清と森繁久彌、高倉健の国民的スター3人を。渥美清は、個人的には喜劇映画『拝啓天皇陛下様』などで見せた演技も好きでしたね。彼は「寅さん」のイメージで見られることが多いですが、実は演技に幅がある名優なんです。森繁は戦時中、NHKのアナウンサーとして満州で過ごした苦労人で、帰国後、喜劇役者に転向。代表作『夫婦善哉』では駄目男を演じましたが、この役は非常に難しい。人生経験の豊富な森繁だったからうまくいった部分もあるでしょう。

芸能界編第1位の高倉健さんは、演技力の点から彼らに次ぐ順位となっています。健さんは私生活よりも仕事を優先し、日本人ならではの美徳を体現した俳優と言えるのではないでしょうか。

「巨人、大鵬、卵焼き」の時代、大鵬はとにかく負けない横綱でした。優勝回数こそ白鵬に並ばれましたが、45連勝がストップした一番は「世紀の大誤審」として今も語りぐさです。

「フジヤマのトビウオ」と呼ばれた古橋廣之進、メキシコ五輪では銀メダルに輝いた君原健二らの活躍は、日本人を励ますとともに世界を驚かせた。野茂英雄は、メジャーリーグ挑戦の道を切り開いたことを高く評価したいですね。その後に続くイチローや松井秀喜らの先鞭となりました。

日本人の素晴らしさが世界に伝わったのは、スポーツだけではありません。手塚治虫と黒澤明は、日本の文化を世界に知らしめることに貢献しました。『鉄腕アトム』や『七人の侍』といった彼らの作品は世界中でファンを獲得し、多くのクリエイターにも影響を与えたのです。

国民作家、司馬遼太郎はそれまでの時代劇、歴史小説とは明確に切断された独自の世界を構築しました。「日本人とは何か」というテーマを通じて日本の近代を洗い出し、『坂の上の雲』では、日本人の未来への展望を切り開く、肯定的な物語を描いた。

学術の分野からは、科学立国・日本を代表する人物、湯川秀樹を選びました。'49年、日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川は、敗戦で自信を失っていた国民に希望を与えた。

最後に、これまでのランキングには出てきませんでしたが、いささか個人的な思いを込めて、生前親しくお付き合いをさせていただいた立川談志師匠を「立派だった日本人」に加えさせてください。歯に衣着せぬ発言で度々物議を醸しましたが、その素顔は非常にシャイで、芸に対して謙虚な方でした。談志師匠ほど、お辞儀をする姿が綺麗な人を私は知りません。その姿が、彼の人間性を物語っているように思うのです。

ふくだ・かずや/1960年生まれ。文芸評論家。慶應義塾大学教授。著書に『日本の家郷』(三島由紀夫賞)、『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』(山本七平賞)、『昭和天皇』(全7部)など