【沿線革命011】
湾岸の交通を劇的に良くするBRTのルートと運行私案

阿部等(交通コンサルタント)

これだけ便利でも運営費はビックリするほど低い

国交省は、路線バス事業の実車走行キロ当たりの収入と原価を発表(http://www.mlit.go.jp/common/001062757.pdf)している。

大都市部の原価はキロ当たり約550円で、人件費が55%強、燃料油脂費が10%弱、その他諸経費が35%強である。経費は、走行キロより走行時間に比例する要素の方が大きい。ということは、原価はキロ当たりでなく時間当たりとした方が実態を反映する。

大都市部のバスの表定速度は15km/h以下なので、キロ当たり約550円は時間当たり約8,000円となる。BRTの地上設備費は税金で賄われるとし、BRT事業者の経費を時間当たり1万円とすれば、連接バスで経費がかさむとしても充分に賄えるだろう。

4系統の所要時間の平均は12分である。時間当たり原価を1万円とすると、片道当たり2,000円となる。1人当たり運賃を、定期割引も見込んで150円とすると、わずか14人の乗車で損益分岐点を越える。

ビックリするほど少人数である。それほど、所要時間が短いことによる車両と運転手の高回転は、原価の縮減に結び付くということだ。

これだけ低コストに高頻度運行を実現できるのだから、「便利でも不便でも利用者数は変わらない、コストは極力抑えなければいけない」との発想から脱却し、徹底的に便利なBRTを実現し、交通を湾岸部の発展の牽引役としたい。

BRTの過少な需要予測から脱却し便利なBRTを!

【沿線革命010】で指摘したように、中央区のBRT構想の需要予測は過少で、その数値のままでは湾岸部は自動車洪水となり、交通によるエネルギー消費も環境負荷も莫大となる。

問題点は、数値そのものが過少であることより、BRTが便利でも不便でも今の都バスの分担率と同じとしている点である。

より便利にするには、より多くのコストを要するので、便利でも不便でも利用者数が変わらないなら、余計なコストは掛けない計画となってしまう。コストを掛けなければ便利にできず、利用は少なく予測は当たったとなるかも知れない。

BRTの利用が少ないとは、自動車での移動が多くなるか、交通がネックで湾岸部の魅力度が下がり、居住や企業立地や来訪が抑えられることを意味する。いずれも好ましくない。

ぜひとも、都(都市整備局)と京成バス、東京都交通局は、「BRTを便利にするほど利用は増える、自動車での移動を減らせる(中央区が定めた基本理念!)」と考え、便利なBRTの事業計画を練って欲しい。

次回は、これだけ便利なBRTを実現したらどれだけの利用を見込めるのか、BRTだけで充分かを示し、そうでないとしたらどうするかを提案しよう。

阿部等(あべ・ひとし)
1961年生まれ。東京大学 工学部 都市工学科卒。88年にJR東日本へ入社、保線部門を中心に鉄道の実務と研究開発に17年間従事。2005年に同社を退社し(株)ライトレールを創業、交通計画のコンサルティングに従事。著書『満員電車がなくなる日』。日経ビジネスオンライン「キーパーソンに聞く」が好評。FacebookTwitterにて実名で情報発信。交通や鉄道の未来を拓きたい方のために、交通ビジネス塾(http://www.LRT.co.jp/kbj/)を主催し、工学院大学オープンカレッジ鉄道講座(http://www.LRT.co.jp/kogakuin/)の事務局を務めている。
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