『読売新聞』(1月6日付夕刊)のみが報じていたが、米国防総省(ペンタゴン)の「伝説の人物」、アンドリュー・マーシャル総合評価局長が終に引退したーー。
何が「伝説」なのかと言えば、93歳の今年の1月2日まで現役で、しかも1973年7月以来同一のポストに40年余も居続けたことである。主要省庁の要職は政治任命(ポリティカル・アポインティ)のアメリカでは考えられないことである。
第二期ニクソン政権の国防長官に指名されたジェームズ・シュレシンジャーが古巣のランド研究所(米軍のシンクタンク)で国際核戦略の研究に従事していたマーシャルを国防総省に招聘、新たに創設した総合評価局の初代局長に任命した。
以来、マーシャルは、ドナルド・ラムズフェルド(フォード共和党政権)、ハロルド・ブラウン(カーター民主党政権)、キャスパー・ワインバーガー(レーガン共和党政権)、フランク・カールッチ(同)、ディック・チェイニー(パパ・ブッシュ共和党政権)、レス・アスピン(クリントン民主党政権)、ウィリアム・ペリー(同)、ウィリアム・コーエン(同)、ドナルド・ラムズフェルド(ブッシュ共和党政権)、ロバート・ゲーツ(ブッシュ&オバマ民主党政権)、レオン・パネッタ(オバマ政権)、チャック・ヘーゲル(同)、アストン・カーター(同)の14人の国防長官に仕えた。
党派を超えて歴代政権に仕えたマーシャルが「伝説の戦略家」と言われるようになったのは、メディアのインタビューに殆ど応じたことがなかったことや上下院の軍事委員会などで証言を免責されていたことなど、所謂「表舞台」に立たなかったことが大きい。
映画スターウォーズ・シリーズ第7弾「スターウォーズ・フォースの覚醒」は今年後半に封切られるが、マーシャルは同シリーズの登場人物になぞらえて「ペンタゴンのヨーダ」と通称されてきた。その心は、D・チェイニー、D・ラムズフェルド、ポール・ウォルフォビッツ元国防副長官ら「ネオコン」と呼ばれた歴代共和党政権の軍事政策の主要人物がマーシャルの「ジェダイの騎士」と見なされていたからだ。