【沿線革命010】
銀座-晴海のBRT計画の需要予測に問題あり!

阿部等(交通コンサルタント)

『考え方』での需要予測の問題点

今後、ルート・運行計画・施設整備計画・車両導入計画その他を練り、収支試算をして実現可能性を評価するうえで、どれだけの利用を見込めるかの需要予測が肝となる。

『考え方』にて、「みゆき通り・環状2号活用案」とした場合の需要予測が以下のように示された。

ケース1は最大需要、ケース2は最少需要、赤マークは本文で解説(2013.5『基幹的交通システム導入の基本的考え方』より)
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転換需要の①~④と新規需要の⑤~⑧を併せて1日当たり15,497~19,168人とは、8,000~10,000人が往復利用するという予測である。読者の皆様はこの人数をどう見るだろうか。

中央区長の言う「交通不便地域の解消」「人口増加に伴う交通需要への対応」「選手村の住宅への転用による交通需要の増加」は、いずれも必要なこと、確実に起きることだ。その上で、1日当りのBRT利用者が最大でわずか1万人弱?

そんなに少ないはずがないと私は断言する。そんな少ない人数を前提に運行したら、開業初日から積み残しが続出し大パニックとなる。例えば、選手村はこの需要予測の時点でも17,000人が滞在できる規模と想定されており、741人とは1日当たり370人が往復利用であり、あまりに少ない予測だ。

中央区の需要予測のどの点を見直すべきか、大きな3点を順に解説しよう。

①バスからの転換利用

中央区地域公共交通会議の基幹的交通システム部会の検討資料(以下、「検討資料」と言う)(http://www.city.chuo.lg.jp/kankyo/kaigi/kmyunithibasu/)によると、ケース1は現行の都バス利用者の半分程度がBRTに転換、ケース2は現行の都バスとBRTのそれぞれのバス停圏域に比例してBRTに転換と想定したという。

つまり、現行の都バスの運行系統は変えずに新たにBRTを運行し、都バスとBRTが客を奪い合うということだ。

BRT運行のための施設整備や車両購入に税金が投じられ、既存の路線バスと競合させるとは如何なものだろうか。また、都バスは利用者が激減し事業に支障を来たす。それにより生ずる赤字の補填にも税金を投じることにもなる。

そして何より、都バスの運行系統を変えないままBRTを導入したのでは、地域にとって理想的な公共交通体系とならない。

都バスの運行系統を含めて路線再編すべきだ。それにより、「①バスからの転換利用」はほぼ倍増する。

③鉄道からの転換

1日当たり838~847人は、都営大江戸線の勝どきと築地市場の2013(平成25)年度の1日平均乗降人員(http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/subway/kanren/passengers.html)の90,601人と25,677人を併せた10万人以上の100分の1以下である。

検討資料によると、838~847人とは、大江戸線の築地市場前-勝どき-月島、東京メトロ日比谷線の銀座-東銀座-築地、有楽町線の有楽町-月島の間の利用のみを転換対象とした人数だという。

それらより、BRT整備地域の最寄りバス停と地域外の各所との行き来の方がはるかに多い。便利な交通サービスを実現すれば、「③鉄道からの転換」は1万人以上を充分に期待できるだろう。

⑤開発関連の新規需要、⑥晴海地区の新規需要

1日当たり5,007人+741人とは、3,000人弱が往復利用するという予測である。【沿線革命007】にて紹介したように、湾岸部はこれから大々的な開発が次々と進み、住む人も訪れる人も増える一方であることからすると、あまりに少ない。

検討資料によると、5,007人+741人とは、予測される居住人口及び就業人口から移動人数を求め、それに現行の(全交通機関の中での)都バスの分担率を乗じて求めた人数だという。

現行の都バスの分担率はわずかに4%強である。新たに創るBRTは充分に便利なものとして、分担率を高くしなければいけない。

もし高くできなければ、人口増に伴い大幅に増える移動の多くが自動車利用となり、道路は大渋滞する。さらには、湾岸部の魅力度が下がり、建物は大量に造ったものの居住も企業立地も進まないという最悪の事態になりかねない。

人の移動とともに物の運搬も切実だ。築地市場が豊洲新市場へ移転した後は、湾岸部の物流トラックの交通量が大幅に増える。道路が渋滞しないためには、旅客に関してはBRTの分担率を高くし、自動車の分担率を極力低くしなければいけない。

BRTの分担率をどれだけ高くできるかは、どれだけ便利な交通サービスを実現できるかによる。『考え方』の需要予測におけるBRTの分担率4%強に対して、少なくとも40%強を実現し、「⑤開発関連の新規需要+⑥晴海地区の新規需要」を10倍としたい。

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