「何を美味しいと考えるか、という点でニッカとサントリーは若干の違いがあると思います。われわれには『自分たちは本物のウイスキーを造っているんだ』と信じる、政孝さん以来の『頑固者の遺伝子』が残っている。一方、サントリーさんはもっと柔軟で、『お客様に美味しいと思ってもらうには、どうすればいいか』という発想ではないかと推察します」
いまやニッカやサントリーのおかげで、日本は世界的にも有数のウイスキーの名産地として認められている。
結局それぞれ別の道を選んだ竹鶴と鳥井—だが、この異質な二人の人生が奇跡的に交わることなくしては、日本のウイスキーがこれほどまでに洗練され、世界的名声を獲得することはなかった。世の左党はみな、この奇跡に乾杯し、祝福すべきだろう。
「週刊現代」2015年1月3日・10日号より