悩みは新たなしくみをつくる「大きなヒント」となる。失敗を恐れる気持ちは捨て「どうすればできるか」だけを考えよう

小山昇『右肩下がりの時代にわが社だけ右肩上がりを達成する方法』【第5回】

社員の退職は損ではなく、むしろ「得」

かつてわが社にいた20代半ばの社員は、「病気になったときに困るから」という理由で、貯金をはじめました。その結果、本当に病気にかかってしまい、治療のために貯金を使いました。彼は病気を引き寄せ、無事に目的を果たしたことになります。

プラスの事柄とマイナスの事柄があると、多くの人は、マイナスの事柄に気持ちを奪われます。「失敗したら困るな、失敗したくないな」と考える。ところが、「失敗したくない」と考えて行動をすると、「失敗すること」が目的になるため、本当に失敗する。

私の思考は、逆です。「失敗はしたくない」「さぁ困った、どうしよう・・・・・・」と嘆いたところで、事態が好転することはありません。プラスとマイナスがあったなら、マイナスは目をつむって捨てます。「どうやったらできるか」とプラスに考えるのです。

「本を出版して、売れなかったら困る」と考えると、売れないことが目的になるので、本当に売れません。だから私は、「どうやったら売れるか」しか考えていません。 

社員が「辞める」とき、多くの社長は、「人が辞めることのデメリット」に気を病みます。「社員教育にお金をかけたのに、辞められたら損」とマイナスに考えます。

でも、この考えは間違いです。
「損をした」といっても、心情的に損をしたにすぎず、コストだけで考えれば、メリットのほうが大きい。むしろ、社員教育をして辞められたら得をします。

高い給料を払っている社員が辞め、その代わりに、新人社員を安い給料で迎え入れれば、人件費や教育研修費が得をします。しかも新人社員は、「すでに、ある程度の知識を持っている」ため、レベルが高い。

10年前の会社のレベルが「2」だった。業績が上がって、会社のレベルが「4」になったとき、Aさんは「忙しいのは嫌だ」といって、会社を辞めました。

Aさんに変わって入社した新入社員Bさんは、「すでに、レベル4に対応している」会社に入社した。すると、安い給与で、レベル4に対応できるBさんを雇用できたことになります。1年も教育をすれば、BさんはAさんと同じ仕事ができるようになる。

武蔵野の部長クラスは、会社のお金を使って、勤務中に、エクセルの使い方を教えました。ところが新人社員は、ITのスキルはすでに高い。学生時代から日常的に「エクセル」を使っているので、一から教える必要はありません。

給料も地位もそれなりに高い社員が辞めれば、人件費が圧縮できるので損益分岐点も低くなる。また、ポストが空けば社内も活性化する。わが社で鍛えられた社員が他社で活躍すれば、それは立派な社会貢献にもなる。

つまり、Aさんの退職は、決してマイナスではなく、「会社にとって都合がよかった」とプラスに考えることができるのです。

<以下、第6回へつづく>

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小山昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。
1948年生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、87年に株式会社武蔵野に復帰。89年に社長に就任し、現在に至る。
同社は08年のリーマンショック、11年の東日本大震災の間にも成長を続け、「12年連続増収増益」を達成。また、14年の消費税増税にもほとんど影響を受けず、最高益を狙う。
01年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開し、業種横断的に500社以上の会員企業を指導。指導企業の中には業界的や市況的に厳しい状況に置かれている会社も多いが、13年度において「5社に1社は過去最高益」を達成。
99年度「電子メッセージング協議会会長賞」、01年度「経済産業大臣賞」、04年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて、「日本経営品質賞」を2度受賞(00年度、10年度)。
おもな著書に『5年で売上2倍の経営計画をたてなさい』『絶対に会社を潰さない強い社員の育て方』(以上、中経出版)、『強い会社の教科書』『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』(以上、ダイヤモンド社)、『増補改訂版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など多数。

小山昇・著
『右肩下がりの時代にわが社だけ右肩上がりを達成する方法』
KADOKAWA/定価1,500円(税別)

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