特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【前編】

NHKスペシャル『メルトダウン』取材班

ICは、動いている。免震棟のこの思い込みが、その後の事故対応に大きな影響を与えていくことになる。 

失われた最初のチャンス

全電源喪失から1時間が経った午後4時41分。暗闇に包まれた1、2号機の中央制御室に大きな変化が起きた。

運転員の一人が声をあげる。

「水位計が見えました」

柏崎刈羽原子力発電所にある水位計。福島第一原発でもこれと同じタイプの水位計があった。  写真:NHKスペシャル『メルトダウンⅠ ~福島第一原発 あのとき何が~』

消えていた1号機の原子炉水位計が見えるようになったのだ。津波の海水をかぶったバッテリーの一部が一時的に復活したようだった。

原子炉水位は、燃料の先端から2メートル50センチ上の位置にあることを示していた。津波が来る前、水位は、燃料の先端から4メートル40センチの位置にあった。1時間に1メートル90センチも低くなったことになる。水位は、その後も刻一刻と下がっていた。

運転員は、水位計の脇の盤面に、手書きで時間と水位を記録していった。そして、ホットラインを通じて免震棟へと報告した。

午後4時56分、水位は燃料先端から1メートル90センチの位置まで下がった。そして、午後5時すぎ、水位計は再び見えなくなってしまった。水位計が見えていたおよそ15分間に、水位は60センチも下がったことになる。これは、ICが動いていない可能性があることを示す重要な情報だった。

免震棟では、発電班の副班長が刻々と下がる原子炉水位の報告を受けていた。この情報は、すぐに技術班に伝えられ、このまま原子炉水位が低下するといつ燃料の先端に到達するか計算された。その予測は、このまま水位が低下すると、1時間後の午後6時15分には、燃料の先端に到達するというものだった。

午後5時15分、免震棟と本店を結ぶテレビ会議で、マイクをとった技術班の担当者の声が響いた。

「1号機水位低下、現在のまま低下していくとTAF(燃料先端)まで1時間!」