特別寄稿 『福島第一原発事故 7つの謎』 事故から3年経ってなお次々に浮かび上がる謎 「1号機の冷却機能喪失は、なぜ見過ごされたのか?」 【前編】

NHKスペシャル『メルトダウン』取材班

原子炉の温度は、ゆっくりと下がり始めた。張り詰めていた中央制御室の空気が緩んだ。

スクラムによる原子炉停止から、およそ40分後。300度だった原子炉の温度は、180度程度まで下がっていた。原子炉は順調に冷却されていた。当直長は、このまま冷温停止に持って行けると感じていた。 

全電源喪失! 暗闇の中央制御室

地震発生から51分後の午後3時37分。福島第一原発1、2号機の中央制御室に異変が起きた。

モスグリーンのパネルに、赤や緑のランプが点灯する計器盤が瞬き始め、1ヵ所、また1ヵ所と消え始めたのだ。天井パネルの照明も消えていった。

当直副長の「どうした!?」という問いかけに、運転員は「わかりません。電源系に不具合なのか」と答えるのがやっとだった。

向かって右側に位置する1号機の計器盤がパタパタと消えていった。天井の照明も時間を置いてひとつ、またひとつと消えていった。左側に位置する2号機の計器盤や照明はしばらくは点灯したままだった。しかし、4分後の午後3時41分。2号機側も真っ暗になった。

それまで鳴っていた計器類の警報も全て消えて、中央制御室は、静まり返った。1号機側の非常灯だけが、ぼんやりとした黄色い照明を灯している以外は、暗闇に包まれた。実に4分の間に、中央制御室は、1号機側から2号機側へと、ゆっくりと電気が消えていったのである。

運転員の一人は、こう語る。

「何が起きたのかまったくわかりませんでした。目の前で起こっていることが本当に現実なのかと思いました」

別の運転員は、電気が消えていくのに時間差があったことを覚えていた。

「自分は、1号機の電源はだめだが、2号機は生きていて大丈夫だ。だから2号機の非常用発電機の電源をもらおうかと、頭の中で考えていました。ところが、その後、2号機側も消えたのです。最終的になぜか1号機は非常灯が点灯していたが、2号機のほうは真っ暗でした」