これからの報道に自社サイトは必要なくなるのか? 脱中心・分散型メディアの可能性

佐藤 慶一 プロフィール
BBCが開設したフェイスブックページ「BBC Thai」

若いミレニアル世代の情報収集・消費に最適化したニュース発信

ツイッター以外にも事例はある。たとえば2014年5月に発生したタイにおけるクーデター。軍事政権によって報道機関への圧力がかかり続けるなか、BBCは2014年7月に「BBC Thai」というフェイスブックページを開設した。BBC記者はもちろん、現地メディアなどからの情報提供も受けながら情報発信をおこなう。

実はBBCは脱中心・分散型メディアとして捉えることができる。BBCは世界でいちばんツイートされるメディアでもある。その数なんと月間400万回ほど。2位のハフィントンポストの倍以上を記録する。さらにはメッセージアプリのLINEやワッツアップをすでに活用している数少ないメディアでもあるのだ。SNSやメッセージアプリのうえで情報発信をいち早くおこなっているため引き続き動向が注目される。

ウクライナデスクのツイッターアカウント

アラブの春やタイのクーデター以外に、ウクライナ紛争をめぐる報道の取り組みも取り上げたい。このとき、海外報道にかなり注力しているニュースメディア「ヴァイスニュース」を筆頭に、テックメディア「マッシャブル」、アグリゲーションサイト「ディグ」、非営利ニュースサイト「マザージョーンズ」、速報ニュースサイト「bレーキングニュース」、ビジネスメディア「クオーツ」の6つのメディアがタッグを組んだ。

その名も「ウクライナデスク」。それぞれのメディアがハッシュタグ「#UkraineDesk」を用いて情報発信し、ひとつのツイッターアカウントに情報をまとめるというもの。これにより、各メディアの記者が得た事実や視点をより速く、より多様な角度から知ることができるというわけだ。それぞれの強みを生かし、弱みを補いながら、まとまった情報収集・集約ができることは読者(ユーザー)視点に立つといいことではないだろうか。

最後に、2012年にハフィントンポスト共同創業者のケネス・レラー氏と元ハフィントンポストCEOのエリック・ヒッポー氏らが立ち上げた短尺の動画ニュースサイト「ナウディス」を紹介したい。

ナウディスはおもに1分以内の動画ニュースを配信するメディア。ツイッター、フェイスブックの活用はもちろん、ヴァインでは6秒、インスタグラムでは15秒の動画ニュースを自社で制作している。さらにはスナップチャットやキックなどのメッセージアプリも活用するなど各プラットフォームに最適化した動画ニュースを制作・配信。1日50本程度の動画が配信され、いまでは月間4000万回再生を超える。

スマホ、ソーシャル、短い動画、コミュニケーション・・・若いミレニアル世代の情報収集・消費に最適化したニュース配信をおこなう先見性には驚く。新しいメディアのかたちとして期待がかかるなか、2014年12月には600万ドル(約7億円)の資金調達を実施。ブランドコンテンツ制作のスタジオを開設し、ネイティブ広告を展開する予定だ。脱中心・分散型メディアの先行事例として、どのような広告でマネタイズがおこなわれるのか注目したい。