これからの報道に自社サイトは必要なくなるのか? 脱中心・分散型メディアの可能性

佐藤 慶一 プロフィール

ほかのプラットフォームに完全依存するコンテンツづくりへ

藤村氏のエントリーでは、バズフィードの50億円の資金調達に触れたニューヨーク・タイムズの記事も紹介している。

〈 未来のBuzzFeedは、BuzzFeed.comにはないかもしれない。同社のアイデアに、「分散型BuzzFeed」がある。それは20人ほどのチームが、Tumblrや Instagram、そしてSnapChatなどの人気のある他のプラットフォームに完全に依存するコンテンツを産出しようというものだ。

CEOのJonah Peretti氏曰く、分散型BuzzFeedは初期段階では直接的な収入とはならないだろうが、やがてページビューのような古典的な指標で測定する以上の大きなものをもたらすだろうとする。 "バイラル"の次にくるもの/『分散型 BuzzFeed』構想の衝撃」より 〉

これまでは検索やソーシャルメディア、直接の流入などから自社サイトで記事を読んでもらうことが当たり前だった。しかしここでは「ほかのプラットフォームに完全依存するコンテンツ」「PVなどの古典的な指標よりも大きなものをもたらす」といった言葉が並ぶ。

このような脱中心・分散型のメディアになると、どのようにマネタイズをおこなえばよいのか見えづらい。藤村氏はこのときビジネスモデルの大きな転換が起こるとし、コンテンツと同じく広告も分散型になるのでは、とのアイデアを挙げている。

ソーシャルメディアに自然に溶け込むジャーナリズムのかたち

次にレポーテッドリーについて見ていく。これは、NSAの盗聴活動の実態に迫るメディア「インターセプト」に続いてリリースされた、ファースト・ルック・メディアの2つ目のメディア。ソーシャルメディアを活用したリアルタイムの報道をおこなうことを目的としている。

「グローバル・ニュース・コミュニティ」とのコンセプトを掲げ、元NPRのスタッフだったアンディ・カーヴィン氏がアメリカのほかイタリアやギリシャ、アイルランドなど世界中にちらばる5名のジャーナリストを率いる。このチームとメディアではソーシャルメディアを自社サイトへの誘導に利用するのではなく、ソーシャルメディア上で読者にニュースを届け、そのなかでジャーナリズムを完結・実現させようと試みる。

カーヴィン氏がこのポジションにいるのは、2011年のアラブの春のときにツイッターを活用して報道をおこなったからだ。当時の混乱のなかエジプトの現地の声を自分のアカウントに集約して伝え続けるとともに、ツイートやフェイスブックメッセージ、写真や動画を自社サイトではなく、キュレーションプラットフォーム「Storify」にまとめたこともあった。まさにレポーテッドリーでもおこなっていくソーシャルメディアをフル活用したリアルタイム報道のあり方と言える。

レポーテッドリーでは、ブログプラットフォーム「ミディアム」でチームの活動の様子を報告しながらも、基本的にはツイッターやフェイスブックレディットなどを利用する。たとえば、ツイッター上で「#AskReportedly」というハッシュタグを活用して読者と直接コミュニケーションをとるなどしている。

ひとつのトピックに対して2名でバディを組み、ソーシャルメディアコミュニティにおける「native journalism(自然に溶け込んだジャーナリズム)」を展開していく予定だ。メインのプラットフォームになるツイッターの特徴は「Live, Public, Conversational(「今がわかる」「開かれている」「会話が生まれる」)」。このメディアチームとの相性は非常によいだろう。

先日のフランス紙襲撃テロ事件においては、ソーシャルメディア上の情報をStorifyですばやくまとめていたし、レディットにも投稿して情報を求めるなどしていた。このようなチーム形態は、速報性のあるトピックについてはある程度機能していたようだ。

バズフィードとレポーテッドリーを通じて、自社サイト以外のプラットフォームに依存してコンテンツを発信することをみてきた。前述のアラブの春以外にも、アメリカにおいてハドソン川の飛行機墜落事故やボストンマラソンの爆破事故などツイッター利用者から第一報が流れた事例は少なくない。このような場合、わざわざ記事をつくるよりも、ジャーナリストが正しい情報を選んで発信したり、まとめることがソーシャルメディア普及時代の情報の届け方のひとつなのかもしれない。