【沿線革命008】交通イノベーションによる沿線革命元年、
朝日新聞の鉄道報道について考えた

阿部等(交通コンサルタント)

交通のサービス向上と交通に関わる雇用増大の好循環

「沿線革命」により生まれる好循環のイメージを示そう。

鉄道やバスその他の「交通イノベーション」により、各所との行き来を便利にするとともに、利便向上に応じて交通サービスの販売価格を見直す。安値だけを指向しては産業として成長できず社会に貢献できない。【沿線革命004】で示した着席割増料金が一例だ。

交通の利用量が増え、かつ皆が納得の上で客単価が向上すれば、交通に関わる売上げが増え、雇用を増やせる。そうすれば、交通の利便性をさらに向上でき、それが売上げを増やしと好循環を生み出せる。

「そんな都合の良いことができるなら、とっくにやってるわ!」と多くの人が言うだろう。ところが実際には行われず、「2015年の首都圏鉄道網はこれしか変わらない」となっている。その原因は「鉄道は収益性を期待できない」「運賃は高くしてはいけない」との決め付けだと問題提起したい。

具体的な「沿線革命」の方策は今までにいくつか提案し、これからも次々に提案していく。

通常号では東京をターゲットにするので、新年の本号では北は北海道から南は沖縄までの3つを紹介しよう。それぞれ概要のみを書き、詳細は関連資料を紹介するので、関心をお持ち下さったら正月休みにジックリとお読み願いたい。

北陸新幹線を活かす!

3月14日に北陸新幹線の長野-金沢が開業し、最短で東京から金沢が2時間28分、富山が2時間8分となる。「裏日本」と呼ばれた北陸が首都圏と近付き、活性化が進むだろう。

一方、並行在来線はJRから切り離され、各県が主体となる第三セクター会社に承継され、お荷物的に見られている。

これも「鉄道は収益性を期待できない」との考えに引っ張られているせいだ。北陸本線は、複線電化で急曲線もなく、最高130km/hで走行できる高規格路線だ。特急列車がなくなれば、地域の輸送に特化できる。

金沢から富山、黒部にかけては平野が広がり膨大な開発余地を持つ。明治維新の頃は全国の人口ベスト15に金沢も富山も入っていたほどで、北陸新幹線開業は北陸が輝く大チャンスのはずだ。それには、新幹線と並行在来線の有効活用が大きな鍵を握る。

2014(平成26)年6月の金沢での講演の資料(http://www.LRT.co.jp/140605hokuriku)を紹介する。

新幹線を大増発するとともに、北陸本線の金沢-泊の108.5kmに48駅増設し、急行と普通を各10分おきに運行することを提案した。東京や大阪の鉄道では当たり前に行われ、技術的にできない理由はない。これだけ便利になれば、沿線は住みやすく、企業も立地しやすくなる。

問題は財務的に成立つかだが、低コスト化の工夫により年間50億円程度の増コストで実行できる。北陸新幹線の投資額1.8兆円の360分の1だ。政府が目指す「地方創生」の、費用対効果の高い格好のネタではないか。

JR北海道の再生策

JR北海道は、特急列車の脱線・火災をはじめ事故が頻発し、保線データ改ざんその他の不祥事も相次ぎ、利用者に大きな不安を与え社会から糾弾を浴びた。

朝日新聞2013(平成25)年10月25日付の「耕論」欄(http://www.LRT.co.jp/file/131025JRnorth.pdf)にて答えたように、JR北海道が窮地に陥った根幹原因は経営安定基金の運用益低下だ。

それを情報発信したところ、105件もの感想・意見を得て、多くの人がJR北海道問題の本質的な解決を望んでいることを確認できた。

朝日新聞2014(平成26)年10月9日付の北海道版にJR北海道再生の提言(http://www.LRT.co.jp/file/141009JRnorth.pdf)が掲載された。

11月29日に開催された第7回「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」in 宇都宮(http://www.yasashii-transport.net)にて、『JR北海道の再生策私案』(http://www.LRT.co.jp/file/141129utunomiya.pdf)を発表した。

「鉄道は収益性を期待できる」としても、全て独立採算で事業成立する、させるべきということではない。

北海道では道路も空港も港湾も経費は売り上げ(受益に対する支払いで、運賃に限らずガソリン税等の税金の場合もある)を上回り、その差額は受益者以外が収める税金により賄われている。鉄道だけを独立採算とする必要はない。

日本国は国鉄改革の際、「JR北海道が能率的な経営の下において適正な交通サービスを実現するには、経費と売上げの間に年500億円の差額を生ずる」と決めたのであり、国にはそれを賄う資金の流れを作る義務がある。

その上で、「減速減便」から「増速増便」への転換による収益と地域貢献の向上を提言した。