【沿線革命007】
勝どき、晴海、豊洲・・・人が急増する湾岸部の「鉄道不足」の将来

阿部等(交通コンサルタント)

勝どき駅の改良工事

臨海部の特徴は、職と住の両方が立地していることである。そして、職住近接で徒歩圏に通勤・通学している人は少なく、臨海部に住んでいる人の大半は他の地域へ通勤・通学し、働いている人の大半は他の地域から通勤して来る。

そのため、勝どき・月島・豊洲とも、朝8時前後は乗る人と降りる人の両方が多く、大変な混雑となる。その改善策として、勝どきでは、ホーム増設・出入り口増設・コンコース一体化の工事が進んでいる(http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/subway/kanren/improvement/kachidoki.html)。

勝どきでは混雑緩和対策の工事が進んでいる(東京都交通局HPより)
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現行は内回りと外回りの間にホームがある島式となっているのに対し、外回りの反対側にホームを増設し外回り専用とし、既存ホームは内回り専用とする。

同様の改良工事をした駅が首都圏にいくつもある。JR山手線の渋谷(http://www.jreast.co.jp/estation/stations/808.html)、東京メトロ銀座線の新橋(http://www.tokyometro.jp/station/shimbashi/yardmap/)と日本橋(http://www.tokyometro.jp/station/nihombashi/yardmap/)である。

なお、勝どきの改良工事は、2015(平成27)年度の供用開始を目標としていたが2018(平成30)年度へ延期された。

勝どきのピーク時間帯の運行本数は実は少ない

勝どきの改良工事により、ホーム及びコンコースとの間の階段等の混雑が大幅に緩和されることは間違いない。しかし、列車内の混雑が緩和されるわけではない。

勝どきと月島の乗降人員の増大とともに、大江戸線の混雑度は年々上昇している。【沿線革命002】で紹介した山手・京浜東北線の上野→御徒町の混雑ほどではないものの、鉄道の輸送力増強がされないまま湾岸部の開発が進めば、事態はますます悪化する。

次回以降に紹介する新線建設やBRT(Bus Rapid Transit、高速バス輸送システム)導入の前に、莫大な投資を伴わずにできることがある。大江戸線の増発である。

勝どきの平日朝の時刻表を見てみよう。

勝どきのピーク時間帯の運行本数は思いのほか少ない(東京都交通局HPより)
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最も運行間隔の短い時間帯は、外回り(大門・六本木方面)7:12~7:36、内回り(両国・春日方面)8:27~9:21の3分おきだが、これは他の区間への対応を優先したもので、勝どきのピーク時間帯ではない。勝どきのピーク1時間と想定される7:30~8:30の運行本数は、外回り16本、内回り13本のみである。

【沿線革命004】で紹介したように、東京圏における主要区間の中の10両編成以下で加減速度の高い路線は1時間に23~32本の運行である。3分おき=1時間に20本でも、それらより少なく、ましてや16本や13本は非常に少ない。

早期に勝どきのピーク時間帯に増発を

勝どきの改良工事は、国交省HPにある資料(http://www.mlit.go.jp/common/000163091.pdf)によると、総事業費100億円となっている。工事期間の延伸により、おそらく100数十億円に増額となるだろう。

勝どきのピーク時間帯の運行を増やすには、車両の増備と乗務員の増員を要するが、100数十億円の投資より少ない費用投入で可能だ。

ひょっとすると、駅の改良工事より増発の方が混雑緩和に対する費用対効果は大きかったのかも知れない。ホーム及びコンコースとの間の階段等の混雑は、運行本数を増やして1列車当たりの乗降人数を少なくすれば緩和できるからだ。

とは言え、駅の改良工事は進んでおり、さらなる利用増を見越せばいつかはすべきものなので、実施すること自体は批判しない。ただ、供用開始が2018(平成30)年度へ延期された見返りとしても、早期の増発による混雑緩和を望みたい。

【沿線革命006】も引続き多数の方がツイート下さった。ツイート以外でも、読者の皆様の自由な質問や意見や情報をお受けしている(http://light-rail.blog.jp/archives/1014464871.html)。すべての投稿に目を通した上で以降の執筆の参考とさせていただく。

阿部等(あべ・ひとし)
1961年生まれ。東京大学 工学部 都市工学科卒。88年にJR東日本へ入社、保線部門を中心に鉄道の実務と研究開発に17年間従事。2005年に同社を退社し(株)ライトレールを創業、交通計画のコンサルティングに従事。著書『満員電車がなくなる日』。日経ビジネスオンライン「キーパーソンに聞く」が好評。FacebookTwitterにて実名で情報発信。交通や鉄道の未来を拓きたい方のために、交通ビジネス塾(http://www.LRT.co.jp/kbj/)を主催し、工学院大学オープンカレッジ鉄道講座(http://www.LRT.co.jp/kogakuin/)の事務局を務めている。