『さようならと言ってなかった』

そんな彼の仕事場で収録したのだが、とにかくビル全体が資料館のような感じだった。それを自慢気に説明し自信満々のエネルギッシュな姿を覚えている。

次に会ったのはほんの数ヶ月前、田原総一朗氏の80歳のお祝いのパーティの席だった。その変わり様があまりにも可哀想でその時に集まったメンバーで励ます会を企画しようと言ったくらい。彼に言わせれば都知事を辞任したことよりも最愛の妻を亡くしたことがよほどショックだったらしい。見る影もない、という言葉がぴったりな様子であった。それでも人間は生きていかなければならない。

妻ゆり子さんの突然の死から数カ月後、まるでその死を忘れようとエネルギッシュに働く猪瀬氏はその仕事からも追放されることになる。自業自得とはいえなんと辛く苦しいことだろうか。救いなのは彼が何とかそこから立ち直り、この本を出版できたことであろう。その様子をみているとまだ何か新しい成果を残しそうであることがせめてもの救いなのではないだろうか。

さようならと言ってなかった わが愛 わが罪

作者:猪瀬 直樹
出版社:マガジンハウス

内容紹介
都知事就任、五輪招致活動、そして突然の辞任。激動のさなか、妻は突然の病に倒れ、帰らぬ人となった。辞任以来の沈黙を破る、招致成功の秘話、5000万円の真実、妻と過ごした40余年の日々。

『ノンフィクションはこれを読め! 2014』HONZが選んだ100冊
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
内容紹介:キルギスの誘拐婚から現代宇宙論まで、嫌われる勇気からヤクザなキリスト教史まで、世界の"今"を紐解く、ブックガイド!ノンフィクション書評サイトHONZ厳選の100冊。

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