『ブルネイでバドミントンばかりしていたら、なぜか王様と知り合いになった。』

最終章を読むと、それまでの彼のバドミントン三昧も違った意味を持つように感じられる。すなわち彼はリスクを取り、果敢に挑戦した。異国でまったく知り合いもいないなか、次々にバドミントン会場に出かけて試合を申し込む。バドミントンの合間に大臣を不機嫌にさせつつも、プロジェクトについて熱心に説明し、ついには「これからはお前の言うことだけを信用する」と言われるまでなる。図々しくも元妃や王子にバドミントンの対戦を申し込み、不機嫌な王子に本気で体の正面にスマッシュを打ち込んだりする。些細なことかもしれないが、これらも結構なリスクだ。一介の二等書記官のふるまいが、国王の機嫌を損ね、日本国の損失に繋がることもあるかもしれないし、そうれば、もう著者の出世の道は絶たれたことだろう。

しかし、著者は果敢に挑み、バドミントンの対戦を通じて生の人間として相手と深く付き合い、信頼関係を構築し、結果仕事も成功に導いたのだ。

実は、日本はブルネイへのODAを1997年度を持って打ち切っている。一方、中国と韓国は、天然資源を狙って、さまざまな支援を申し出ている(中国には南沙諸島領有権をめぐる政治的思惑もある)状況だ。実際、日本とブルネイの経済連携協定の協議ではブルネイは中国の顔色を伺うようなふるまいを見せ、また日韓による、国連専門機関の局長ポスト争いの際には、ブルネイに支援を取り付けようとしても、「ノーコメント」とにべもない返事しか来なかったこともあった。そんな状況下で、著者は個人の力でブルネイ政府と強い信頼関係を構築したのだ。その意味で、著者は、いまだ「バドミントンの効能」に気づいていない中国や韓国を巧みに出し抜いたともいえる(実は中国も韓国もバドミントンの強豪国だ)。

本書は異国で挑戦し、力強く生き、真の信頼関係を得るための、恰好の教科書にもなっているのである。

『ブルネイでバドミントンばかりしていたら、なぜか王様と知り合いになった。

作者:大河内 博
出版社:集英社インターナショナル

内容紹介
「ブルネイと日本の架け橋になる!」。堅い決意で赴任したのはいいものの、この国独特の「社会の壁」にぶち当たって仕事は何一つうまく行かず、おまけに上司からのパワハラに遭って、暗い日々の連続。そんな中、ストレス発散で中学時代に熱中したバドミントンを始めたのだが…。下っ端外交官が「世界一の金持ち王国」でなしとげた奇跡と感動の実話。

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作者:成毛 眞
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