『ブルネイでバドミントンばかりしていたら、なぜか王様と知り合いになった。』

著者は、試合を通じて彼らと一気に親しくなる。実は、そのへんのおじさんだと思っていた彼らのなかにはエネルギー省の高官や警察や海軍の幹部がいた。大使館の二等書記官では絶対にアポの取れない人々である。

こうして、著者は「鉱脈」の端緒を掴む。そして、あとはとにかくバドミントン三昧。睡眠時間3時間でひたすらシャトルを追い続ける(セレブたちは夜型で深夜にプレーするのだ)。バドミントンをしてただけなのに(だけ、というのはまあ、著者に失礼だが)、やがて警察幹部や大臣に電話で根回ししてプロジェクトを成功に導けるほどの人脈を築き、ついには王族と関係を作るに至るまでの、熱く楽しい過程は、ぜひとも本書を読んで楽しんでほしい。

さて、ここまでは、アホな(失礼!)熱い男が、美しい奥様とかわいい子どもに迷惑かけまくりつつ、ひたすらブルネイでバドミントンをしまくる痛快で楽しい物語、なわけだが、最終章で一気に雰囲気が変わる。

ブルネイ側の要請によって、赴任期間は異例の5年間に伸び、その後帰国して経産省に戻った著者が感じたのは、「なぜ、日本はこんなにも弱ってしまったのか」ということだった。著者が担当したのは、家電、コンピュータ、通信機器、半導体デバイス産業など、日本の花形産業であった業界だ。そこには、さまざまな企業担当者から相談が来ていた。

「A国では日系メーカーに不当な関税がかけられています。韓国メーカーは無税です。なんとかならないでしょうか」
「B国が海外製品の輸入を制限するルールを作ろうとしている。なぜか韓国の製品は除外され、我が社を含めた日本企業の製品だけが引っかかるようになっており、困っている」

いい製品を作れば売れる時代は終わった。日本は、経済上の日々の戦いで敗れつつあるーー。

著者が、そんな「駆け込み寺」のような仕事をしつつ、感じるのは、メーカーの責任者や、意思決定者が誰なのか見えないということだ。問題を持ち込めば国がなんとかしてくれると思っているふしがある。リスクを取らず、できるだけ問題を回避する人が出世し、成功する日本企業の体質を肌で感じた。これでは事なかれ主義のブルネイの官僚たちを嗤えない。

また、省内も変わった。朝、山のように届く省内からのメールのほとんどが、責任やリスクを回避するためのばかりで、うんざりしてしまったという。
「なぜ、日本はこんなことになってしまったのか」「日本が弱っている、誰も挑戦しなくなった」。

結局、著者は経産省を辞めてブルネイに移住、「挑戦する日本企業」をサポートすべく、奮闘していくことになるのである。