前回は、メジャーリーグ球団のボストン・レッドソックスが、地域に向けてどんな慈善活動を行っているかについてご紹介しました。
選手が“選手であること”の価値を上手に利用し、球団は知名度や組織力をフルに活かし、そこにファンが力を貸す。それによってたくさんの一般市民が救われているという構図は、私がベースボール・レジェンド・ファウンデーションの青写真を描く際に大きなヒントとなりました。
ベースボール・レジェンド・ファウンデーションを立ち上げたのは、アメリカで“スポーツの力”の偉大さを実感したからです。レッドソックスの取り組みによって多くの人々が救われている現実を知ったとき、「きっと日本のプロ野球にも同じくらいの魅力とパワーがあるはずだ」と強く感じました。
また、私が「レッドソックスの選手、最高にカッコいいな」と感じたのと同じように、日本の子どもたちにも「プロ野球選手ってカッコいい」と感じてほしいと思ったのです。それによって、野球をやる子どもや野球ファンがもっと増えれば、間違いなく野球の発展につながります。
しかし、アメリカは宗教的・文化的に「チャリティー」や「ボランティア」が生活に根付いた国。日本とは背景が違います。東日本大震災以降、日本でも社会貢献や慈善活動に対する考え方は少しずつ変わってきていますが、「ボランティア活動は日常茶飯事」「セレブリティであれば慈善活動をするのは当たり前」といった“アメリカ式”をそのまま日本に持ってきても失敗するだろうと思いました。
まず考えたのは、選手・OBの参加方法です。やはり、野球において主役であるプレーヤーたちに賛同してもらうことがすべてのスタート。それなしでは何も始まりません。そこで私たちは、選手・OBたちに負担の少ない形で参加してもらえる方法を考えました。
ベースボール・レジェンド・ファウンデーションは、選手・OBに寄付などの金銭を要求することは一切ありません。お願いするのは、サインボール、サイン色紙、使用済みアイテムなど、「知名度があるからこそ価値のあるもの」を提供することです。サインボールや色紙は、当団体に寄付してくれた方へのお礼としてプレゼント。使用済みアイテムは、チャリティーオークションを通して野球ファンのもとに渡ります。そして、集まったお金は困っている方々のもとに届きます。
まずは、無理のない形からのスタート。参加してくれた選手・OBたちが「手ごたえ」を感じられる環境を作り、少しずつ信頼を築いていけば、いずれ彼らのほうからも「賛同したい」という声が上がるはず、と期待しています。