「親しみを増すことで熟成する関係の価値を信じたい」---ビジュアルコミュニケーションアプリ「Picsee」運営のディヴィデュアル代表・遠藤拓己氏に聞く

佐藤 慶一 プロフィール

写真共有を超えた新しいコミュニケーションの可能性

Picseeは12月にリリースされたが、アイデアの着想は2年前の2012年にさかのぼる。ディヴィデュアルでは当時、2008年にリリースした、「へこみ」や「悩み」を投稿するとみんなが「なぐさめ」を書き、それに対し「ありがとう」を送ることができるコミュニティサービス「リグレト」を運営していた。約60万人のユーザーを抱え、数億回の「ありがとう」が送られるまでに成長し、サービス自体は大いに盛り上がっていた。

時を同じくして、スマートフォンが全世界に急激に普及し始めていた。「リグレトの運営経験を生かしながらも、全世界の人々に使ってもらえる骨太なサービスを作りたい」。新サービスのための合宿を重ねるなか、共同創業者のドミニク・チェン氏から出されたアイデアのひとつがPicseeの原型となるものだった。

2012年にドミニク氏に子どもが生まれ、夫婦で写真を撮影する生活が始まり、半年の間にそれぞれのiPhoneに4000枚ずつの写真が記録された。しかし、ここで課題に気付く。お互いにシンプルに共有できる手段がなかったのだ。オンラインストレージサービスを利用するという選択肢もあるが、たとえば親や友人とも共有したいとなると、それを実現できる簡単な手段はほとんどない。

この課題をもとに「それぞれが自分のスマートフォンで写真を撮影すると共通の場所に自動的に保存される」サービスのアイデアをドミニク氏が提案。社内ブレストが活発になるなか、遠藤氏が「いっそのことカメラロールごと共有できないかな」とつぶやいたことから、CTOの山本興一氏が1時間でプロトタイプを制作し、すぐさまチームで使いはじめた。すると、単なる写真共有を超える感触があった。新しいコミュニケーションの可能性が見えたのだ。

Picseeのアイデアが出たときのノート

「インターネットを人間の自然に近づけたい」

Picseeは、メディア・アーティストの遠藤氏、研究者のドミニク氏、クリエイターの山本氏を中心に、6名のチームで開発・運営をおこなう。2012年から2年の時を経て、ようやくリリースにたどり着いた。「サービスをつくる会社がサービスを運営できないというのはしんどい。けれども、このチームなら絶対にすごいサービスが生み出せるという確信もありました」と遠藤氏は語る。2年間で500人を超えたβテスターの中には、日本を代表するコピーライターの糸井重里氏や、写真家の新津保建秀氏らも名を連ねていた。

Picseeの開発にあたっては、カメラロールをまるごと共有するからこそ生まれる親密さや、ビジュアル志向のコミュニケーションだからこその圧倒的な情報量にフォーカスした。ソーシャルでオープンな写真共有サービスやSNSが流行するなか、プライべートのビジュアルコミュニケーションというジャンルに可能性を見出す。

「パブリックな場所には多少なりとも化粧をしていかないといけませんが、Picseeの場合は『すっぴんジャージ』でもOKです。手ブレしていたり、ピントが合ってなかったりする"生写真"がPicseeで「ピコン!」と届くと、そんな写真を送ってくれた相手のことをグっと近くに感じる。Picseeを使ってコミュニケーションをしていると、関係性がどんどんと深まっていくのです」