田村耕太郎【第4回】世界における日本経済のシェアの低下とともに聞こえる「アジア時代」の足音

『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』より
田村 耕太郎 プロフィール

日本の場合、最近では隣国の同業他社による技術者引き抜きから、技術移転が大きなスケールで発生した。その反省から、大企業は今さら技術者の囲い込みに走っている有り様だが、いかに日本企業が技術者を囲い込んでも、その成果は一定はあるだろうが永続的にその生産性の差を維持することは困難だと思う。となると、経済力の差はどこでつくか? 

それが「頭数の差」だ。生産性の大差が固定でないなら、労働者も消費者も多い場所のGDPが大きくなっていく。前述のアンガス・マディソンの研究によれば、100年以上の期間で見ていくとGDPに最も相関がある指数は「人口」である。

私は、これから長期的には「世界各国の1人当たりGDPは"平均"に近づいていく」という仮説を立てている。もちろん格差がなくなるわけでもないし、各国内でも都市によって1人当たりGDPに差は出てくるだろうが、国ごとに大きく差があった1人当たりのGDPの差は、小さくなっていくのではないかと予想している。

2つのチャートでもわかるように、世界の1人当たりGDPの差は縮まっている。中でも日本については興味深い事実がある。日本の1人当たりのGDPを取り出して世界の平均と比較しているチャートを見ると一目瞭然であるように、日本の1人当たりのGDPは世界の平均に接近し始めているのだ。

同時にわかるのが、日本は1950年ごろまで、世界の平均以下の豊かさの国だったことである。つまり、過去2000年の世界経済の歴史の中で、日本は大半の時代、世界平均並みの豊かさしかもちあわせていなかったのだ。江戸時代末期から急増させた人口で、全体のGDPでは世界6位くらいのサイズを誇っていたが、1人当たり平均となると長らく「並よりやや下」で、世界平均より倍以上豊かになったのはつい最近のことである。

今も1人当たりで世界平均の3倍以上の豊かさを誇るが、その差は縮まっている。これからゆっくりと1人当たりの豊かさで世界との差は縮まっていき、頭数も急速に減り、世界における日本経済のシェアは低下していくとの見方は間違いないのではなかろうか。

(第5回につづく)

シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ
田村耕太郎著

(PHPビジネス新書、983円)

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