田村耕太郎【第3回】世界から礼賛されてきた国民皆保険・皆年金システムが日本をより苦しめる

『シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ』より
田村 耕太郎 プロフィール

この相互扶助システムが、激減する労働力人口に重い負担を浴びせていくことになる。もちろん、日本政府も愚かではないし、若者や元気世代も声を上げつつあり、国は相互扶助のあり方をすでに徐々に見直しつつあるが、世代ごとの負担の不公平は今後の若者に重くのしかかるだろう。重い負担を、今の若者や子供たち、これから生まれてくる子供たちが負わされていくのだ。

政府はこれまで触れていなかった年金や医療保険もいじっていくだろう。それらを現実的にカットしながらも、企業の空洞化を防ぎ、外国法人誘致のためにも法人税は上げられず、所得税は高度人材が逃げ出す限界まで高まるだろう。それでも消費税は20%を超え、30%をうかがうという世界に類をみない水準まで上がっていくだろう。

相続税等の資産課税も強化されていくと思われる。実際日本の税収47兆円(2013年)ほどのうち、相続税からの税収は1兆5000億円ほどで、税収全体の3%程度しかない。相続税の税収への貢献など知れているのだが、広く国民に負担を求める消費税を上げていくにあたり、お金持ちを痛めつけないと国民の理解は得らないということだろう。

ということで、稼げる個人は事業とともに海外に出て行ってしまうかもしれない。それが所得税や法人税という、もっと税収に貢献できる項目を減らしてしまうかもしれない。

そうなると、国民の負担はさらに重くなる可能性も出てくるのだ。

(第4回につづく)
 

シンガポール発 最新事情から説く アジア・シフトのすすめ
田村耕太郎著

(PHPビジネス新書、983円)

日本とアジアの長所と短所を冷静に把握したうえで、アジアの熱風を感じつつ、時代に合った形でアジアの活力を取り入れる――そのための最高の素材として活用できる1冊。

アマゾンはこちらからご覧ください。