心が動く瞬間(インサイト) ~利己的欲求と利他的欲求~

第二回

コミュニケーションの前提は「人心」にあり

 僕が第二回目となるこのコラムを「心」の話からはじめるのには、2つの理由があります。まず、第一に僕が、コミュニケーションは人のをつなぐものだと考えているからです。

 論理的な戦略論、緻密な戦術論も行きつくところは"いかに相手の気持ちを動かすことができるか"に尽きるわけです。その点で言えば、時代が変わって、メディアが変わっても、コミュニケーションの目的は変わらないでしょう。いつの時代もコミュニケーションを考える上で、すべての起点となるのは、「コミュニケーション大図鑑」で示した《グラウンド(地べた)》=1次元のレベルにある人心だということに異論を唱える人はいないと思います。

 もう一つの理由は、逆に、「いまの時代の人心をどう見るか」という問題提議にあります。人の心を動かすという目的は変わらなくとも、時代と社会が変化するとともに、対象となる人心にも微妙な変化が現れてきます。

 つまり、高度成長、バブル期を経て、右肩下がりの低成長の時代に入った"今"だからこそ考えるべき心の機微があるだろうということです。例えば、ソーシャルな活動=「社会貢献」=「チャリティ」「ボランティア」というような連想に陥りがちだですが、僕は、CSR(企業の社会的責任 Corporate Social Responsibility)活動やコーズ・マーケティング(コーズとは"社会的な意義"の意味で、コーズ・リレーテッド・マーケティングとも言う)を考える前に、「そもそも人は、なぜ? 善いことしたいのか」という問題をしっかりと捉えるべきだと考えるわけです。

 ということで、「心が動く瞬間(インサイト)」とは、一体どういう"瞬間"なのか、から話を始めましょう。

 僕は仕事柄、いろんな人の話を聞きます。それは、普段は聞くことのできない、消費者の本音を聞こうというものです。「なぜ、この商品を選んだのか」「なぜ、このブランドが気に入っているのか」逆に、「なぜ、買わないのか」「なぜ、魅力を感じないのか」等々についてインタビューを行います。皆さんも"マジックミラー越しのインタビュールーム"をテレビなんかで見たことあるかもしれませんね。

 インタビューを受けている人から鏡にしか見えていないのですが、鏡の裏側からインタビューの様子が見えるというやつです。僕らは商品開発や広告やPRの戦略を考えるときに、そういう部屋を使って、想定ターゲット(調査会社にモニター登録している方々)にインタビューをすることで「心の動き」を探るわけです。鏡越しに5人~6人消費者のインタビューを傾聴するという、いわゆる「グループインタビュー」という調査が一般的です。

 例えば、「アラフォー女性の化粧品の選び方、使い方について」「30代~50代の男性の損害保険に対する知識とイメージについて」「首都圏に住むビジネスマンのキャリアアップ志向と語学(英語)への関心度について」、さまざまなテーマについて話を聞きながら"消費者"の深層心理を探るわけです。その際に、いつも思うのは、人は自分の心のままに生きているということと、普通に生活していると、他人の心の声に注意深く耳を傾ける機会はあまりないのではないかということです。

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