『理系の子 高校生科学オリンピックの青春』巻末特別対談:成毛眞×田中里桜 科学の研究って役に立つの?

田中 日本の大会の審査では、専門的な観点から、その研究がどのくらい精度が高いかとか、再現性があるかどうかとかをみる側面が強いんです。でもISEFはテイストが違って、どの審査員にも必ずといっていいほど聞かれるのが、「あなたの研究ってどういうふうに役立つんですか」という質問なんですね。行く前は、「どういうふうに役立つの」という言葉が、「どういう経済的な利益を上げられるの?」っていう、利潤を追求するいかにもアメリカ的な考え方だと思っていたんですけど、実際、審査員の先生と対話してみると、そうじゃなくて、「社会にどういうよい変化を起こす力を持っているのか」、という、もっと高次の話なんだと知ったんです。

成毛 なるほどね。ただ、アメリカに関してはちょっと問題を感じなくもなくて。実は今、高エネルギー物理学の実験設備というのがアメリカになくなっちゃったんですよ。今一番でかいのはCERNというジュネーヴにある装置、その次が日本のKEKで、アメリカは役に立つ研究以外はしなくなったフシがある(笑)。お金というのは30年以内に儲かりそう、実現しそうな部分。でも今、相対性理論がないとGPSも補正できないと言われています。「相対性理論なんて何の役に立つのか」なんていう人もいますが、実はカーナビの役に立っていた。アインシュタインが相対性理論を見つけたのは1905年なんで、彼が相対性理論を唱えたときには、本人も含めて地球人全員が「何の役に立つんだよ」と言ってた(笑)。だから100年単位で見れば、役に立ちそうもない純粋科学のなかに、意外と役に立つものがあるかもしれません。

こういう科学者になりたい!

成毛 「面白そうなことをやる」、「自分が面白そうなことだけやる」っていうのは、正しいような気がするんです。この本に出てくる人たちは、みんなそんな感じがありますよね。「自分がやりたいことだけやっています」という。実際、ISEFでほかの人たちを見ていて、どんな感じでした?

田中 一番、目についたのは、海外の学生は企業とか大学と連携してやっている人が多いなということでしたね。私も「どこがスポンサーなんですか?」って聞かれて、「え?」ってなりました(笑)。

成毛 でも、企業をどうやって見つけるんだろう。

田中 アメリカの科学の授業で、たとえば大学の先生とか企業のエンジニアの人とかを自分で見つけて、教えてもらいなさい、っていう授業があるみたいですね。

成毛 そこまで授業でやるって、すごいな。この本を読んでいると、アメリカの高校って研究設備が充実している感じもある。ガスクロマトグラフィーとか分光装置とか、装置がいっぱいある学校があって、もちろんそうじゃない学校もありますけれど、日本の高校の理科教室の設備と全然違う感じがする。

田中 でも私が思うに、自分で興味を持って、自分から働きかけていけば、日本でもチャンスがないとは思わないんです。というのは、私自身は身近なことから興味を持って研究をはじめました。私の住んでいるところは天然ガスの産地なのですが、ガス爆発事故をきっかけに、この土地はどうしてそんなに天然ガスを含んでいるんだろう、ほかの土地とどう違うんだろう、と思ったんですね。それをガス会社に聞きに行ったこともあります。有孔虫については博物館で、有孔虫というのを使って地層の成り立ちを調べることができる、という展示を見て、ああ、これで調べられるかもと思って、その博物館の専門の先生に聞いたのが始まりなんです。