勝間和代×渡辺由佳里【前編】「具体的な目的のない努力は疲れるのでやめにしましょうよ」

人は自分で体験したことの延長でしか想像できない

渡辺: 努力の楽しさも、やってみないとわからないところにあると思うんです。私、子どものころは学校で一番運動ができなかったんです。遠足の山登りなんかでも、体力がないから、みんなから離れた最後尾を先生に付き添われて、とぼとぼ歩いて……。ずっとそんな感じでしたから、自分の中に成功事例がなかった。

でも、大人になってから走るようになったんです。小説(『ノーティアーズ』、新潮社)を執筆しているとき、主人公が「ジョギングをする女性」という設定だったので、自分でも走ってみないと主人公の気持ちがわからない、と思って。

最初のうちはただ苦しいだけです。でも、1キロでも走れるようになると、「私でも1キロ走れるんだ」と、素直に自分のことが認めてやることができた。誰かと比べてではなくて、幼稚園時代の私、昨日までの私と比べてです、走ることで私が学んだのは、成功事例の積み上げかたでした。

勝間: うん、うん。

渡辺: ジョギングをしていると言うと、「そんなに苦しい思いをしてまで健康になりたいのか」とからかわれることがたまにあります。運動をなさらない方ほど、そうおっしゃいます。でも実際にやってみると、こんなにおもしろいことだったのか、こんなに気持ちいいことだったのかと分かる。これが努力だと思うんですよ。

勝間: 結局、「体感」なんですよね。想像って基本的に、いままで経験したことの延長でしか想像できませんから。経験していないものを想像するって不可能です。よく「想像力の限界」って言われますよね。でも私は、想像力なんて誰にもないと思う。だって、体験したことないものを想像しろといったって、できないですよ、そんなもの(笑)。

マインドセットを変えるのは加齢だけ?

渡辺: 私の場合、ものを考えるときには紙に書かないとダメなんです。それも、ぐちゃぐちゃぐちゃーっと紙に書きなぐってしまう。でも、他の方は、きれいな字やパソコンできちんと整理されたメモを取る方が多いですよね。ふつうならそれを見て、「私のメモの取り方はまちがっているし、みっともない」って思うところなんでしょう。でも、私にはこのやりかたが一番合っているし、このやりかたしかできない。だから、もうこれでいいやと思っています。

勝間: どこで割り切るかなんですよね。昔は「あの人のようにならなきゃ」「人と同じようにやらなきゃ」だったのが、ちょっとずつ意識が変わっていく。ポイントになるのは「カレイ」だと私は思っています。

渡辺: カレイ?

勝間: 加齢。エイジングですね。身もフタもない話をしてしまいますが、やっぱりねえ、「私も○○さんのように立派にやらなきゃ」なんて焦ったり落ちこんだりする必要はないってことを、10代や20代で悟れというのは、どだい無理なんですよ(笑)! 本人の性格よりはほとんどエイジングだと思っています。

渡辺: 歳をとって、だんだん頑固になっていってダメになるケースも……(笑)。

勝間: そうそう、だから「よいエイジング」ってそういうことだと思うんです。
 

(後篇に続く)

勝間和代(かつまかずよ)
1968年、東京都生まれ。経済評論家。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析取締役、内閣府男女共同参画会議議員、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。
渡辺由佳里(わたなべゆかり)
エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家。兵庫県生まれ。助産師、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)など。糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)はベストセラーに。ブログ「洋書ファンクラブ」 http://watanabeyukari.weblogs.jp/yousho/

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