第6回ゲスト:大沢在昌さん (後編)
「『生島治郎の後を継いで、日本にハードボイルドを根付かせるのはおれだ!』と本気で思っていました」

島地 勝彦 プロフィール

生島治郎との出会いが広げてくれた作家人生

大沢 この話には後日談があります。ぼくが直木賞をとった直後、生島さんの自宅に遊びに行ったんですが、その日、生島さんはえらく機嫌がよくて最初からニヤニヤしてました。ぼくの受賞をそんなによろこんでくれているのかと思っていると、「おい大沢、いいもんがあったぞ」と、ニヤリ。嫌な予感がしながら「なんですか?」と聞くと、引き出しをあけて古い封筒を取り出したんです。

日野 まさか、大沢先生が中学生のときに書いた・・・。

大沢 そう。実物が残っていたんですよ。こっちが茫然としていると、「どうだ。新直木賞作家の大沢在昌が出したファンレターとして、マスコミに公表してやろうか」という。とはいっても、田舎の中学生が出した手紙ですから、「そんなもの公表してもなんの価値もありませんよ」と反論しました。そしたら「じゃあおれのと交換しようぜ」と。

島地 ふふふ、生島さんもなかなか執念深いんだね。

大沢 「返せません」「じゃあ公表だ」「だからそれは話が違うでしょう」・・・また子供みたいなやりとりをくり返しました。

島地 大沢在昌の作家人生は、生島さんとの出会いがあって、いろんな意味で広がりましたね。生島さんの最初の奥さん、小泉喜美子さんとの出会いもそう。喜美子さんは生島さんと別れた後、「深夜プラス1」の内藤陳さんと内縁関係にあった。

大沢 喜美子さんは育ちが良くてインテリで、チャキチャキの江戸っ子。それが酒を飲むとガラリと豹変するからびっくりしました。夜中に何度、電話で呼び出されたことか。

島地 「深夜プラス1」で喜美子さんと朝まで飲んだことがあったんだが、次の日にゴルフの約束があったから、朝方、チラッと腕時計を見たんだよ。そしたら「シマジさん。ハードボイルドの主人公は人前で腕時計は見ませんよ」とくる。やられた! と思ったね。