第6回ゲスト:大沢在昌さん (後編)
「『生島治郎の後を継いで、日本にハードボイルドを根付かせるのはおれだ!』と本気で思っていました」

島地 勝彦 プロフィール

直木賞作家と、後の直木賞作家の押し問答

島地 二枚目でお洒落で、自分のスタイルに気を使う人でしたからね。

大沢 でもこっちは現にもらっているわけですよ。「本当に持っています」といっても、「いや、それは何かの間違いだ」と断言される。その後も麻雀するたびに返事の話をふってみましたが、「あり得ない」の一点張りでした。

日野 自分なら実物を見せるかもしれません。

大沢 そう。ぼくもある日、実物を持っていって雀卓の上に広げたわけです。最初は怪訝な顔をしてたけど、「これは俺の字じゃないか!」と。その後も「どうしたんだろう。ヒマだったのか、俺は」と真剣に悩んでいました。本当に忘れていたのか、しらばっくれていたのか、真相は分かりませんが、そこから一気に親しくなった気がします。

島地 直木賞をとった後だから、ヒマということはないだろうね。

大沢 おかしいのはその先で、生島さんはぼくに向かって「お前さ、もう作家になったんだから、この手紙は要らんだろう」という。

島地 自分のスタイルに反するから返してくれと?

大沢 そういうことでしょうね。でも、これはぼくの宝物だし、手紙というのは受け取った側に所有権がある。生島さんが死んだら追悼特集に載せるから絶対に返せない、と突っぱねました。雀卓の上で「そんなこと言わないで返せ」「嫌です」「返せ」「絶対に嫌です」・・・。

島地 アハハハ。直木賞作家と、後の直木賞作家が子供みたいにやり合ってる様子は、想像するだけで可笑しいね。