[アイランドリーグ]
巨人育成1位・篠原慎平、2年間登板なしから甦った不死鳥

~ドラフト指名選手紹介Vol.4~
スポーツコミュニケーションズ

「過去は過去。これからが勝負」

 シーズンが終盤に突入し、ドラフト会議が近づくにつれ、篠原は寝付けなくなった。ラストチャンスでNPBに手が届きそうなところまでは来た。ただ、手応えは全くなかった。

「アピールする場も、あと数回しかないと思うと不安になりましたね」
 ベッドで目を閉じても、「どうなるんだろう」と思い始めるとなかなか眠れない。当日までは熟睡できない日々が続いた。

 運命の10月23日、テレビ画面の前でチームメイトや関係者とともに篠原は朗報を待った。まず隣に座っていた寺田が東京ヤクルトから指名を受け、全員が沸いた。しかし、自らの名前はなかなか呼ばれない。他の指名選手の名前が次々と出てくる時間がとてつもなく長く感じられた。

 ドラフト会議は育成選手の指名に突入した。

「読売。篠原慎平。香川オリーブガイナーズ」
 画面に名前が表示され、司会者から読み上げられた瞬間、脳裡には高校を中退し、リーグに来てからの7年間が走馬灯のごとく一気に駆け巡った。涙が自然とあふれ出た。

 育成指名とはいえ、幾多の試練を乗り越えてのNPB入り。“見事な復活劇”と周囲は右腕を評する。だが、本人は、その表現には首をひねる。

「確かに昔も今も速球派で、ピッチングスタイルは変わっていません。でも、僕の中では昔の自分はもういないんです。今年は、もう過去の自分を追い求めなくなっていました。“昔に戻りたい”とか、そういったマイナスなことは一切考えない。意識の変化もプラスに働いたと感じています」

 一度、灰になって生まれ変わる不死鳥のごとく、どん底から輝く世界に羽ばたく。
「いろいろな経験をして、体も心も強くなりました。これは誰にも負けない武器です」
 24歳はそう言い切る。

「でも」と言葉を遮り、篠原はこうも続けた。
「過去は過去。これからが本当の勝負です。入って満足したら終わり。終着点ではないことは自覚しています」

 支配下登録、1軍登板、初勝利……そして巨人の主力投手へ。不死鳥が舞い上がる空は果てしなく広がっている。

(石田洋之)

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