家庭菜園で海外原産の野菜が立派に育つ「土」を科学的に作る!

『「育つ土」を作る家庭菜園の科学』
木嶋 利男 プロフィール

水と栄養は全ての野菜にとって、量は異なりますが必要です。水はけと水持ちを良くする立体構造、栄養分を保持する有機物や粘土の施用は共通する部分が多くなります。

山の崩壊地や河川の氾濫地などでは、最初に根粒菌やフランキュア(放線菌の総称)などの空中窒素を固定する菌と共生するハンノキやニセアカシヤなどの植物が繁殖して栄養分を作り出します。

次に栄養分を好む植物が繁殖し、やがてその土地の気候や土壌条件に適合した植物相(極相)に遷移します。

植物は個々の繁栄のため、他種を排除して繁殖する性質がありますが、一種類だけの植物で生存することはほとんどありません。何種類かの植物が共栄して群落を形成します。

安定した自然生態系を観察すると、同じ場所に同じ植物が毎年自生してきますが、家庭菜園の野菜類でも、このような自然と似た栽培は可能だと思います。

一種類だけの野菜で菜園に好適条件を作り出すことは困難ですが、何種類かの野菜類を組み合わせるとそれが可能になります。伝承農法では麦類の間にラッカセイやサトイモを栽培、根粒菌と共生するインゲンやダイズと多肥を好むトウモロコシの間作や、長ネギとウリ類、柿とミョウガ、梅とリュウノヒゲの混植などが行われてきました。

間混作は原産地でない土地でも作物の栽培を可能にしてきました。農耕地は人の手によって管理されますので、極相は存在しませんが、安定した耕地生態系は存在します。完成した間混作は耕地生態系の極相とも考えられます。

農薬や化学肥料は農業生産の安定と増収に大きな役割をはたしました。しかし、害虫や病害を絶滅させ、草も生えない栽培方法は生態系を攪乱しました。生態系の攪乱はこれまで病害虫として問題とならなかった微生物や昆虫の病原菌化あるいは害虫化、朱鷺やコウノトリの絶滅等、新たな問題も引き起こしました。

日本国土の70%は山林であるため、落葉や枯れ草などの有機物は容易に手に入ります。収穫残渣、落葉、草などを用いた堆肥で栽培した農作物は物質循環系にとって大切です。

また、野菜類は連作すると土壌病害などの連作障害が発生すると考えられてきました。しかし、連作すると一時的に連作障害が発生するものの、さらに連作を続けると病害虫が減少し、収量が増加する不思議な現象が現れます。

土は農作物を育てますが、農作物は土壌微生物などを介してその農作物に合った土を作ります。

このたび、講談社ブルーバックスから『「育つ土」を作る家庭菜園の科学』を上梓しました。有機物を十分に施用した土づくりを行い、草類も含めた耕地生態系を作り上げ、原産地の温度条件に合った適期に栽培すれば、農薬や化学肥料に頼らない家庭菜園が可能と思います。

(きじま・としお 伝統農法文化研究所代表、農学博士)
読書人の雑誌「本」2015年1月号より

木嶋利男(きじま・としお)
1948年生まれ。農学博士(東京大学)。栃木県農業試験場生物工学部長、自然農法大学校長、(財)環境科学総合研究所長などを経て、現在は伝統農法文化研究所代表、(公財)農業・環境・健康研究所理事。有機農業・伝承農法などの研究・実証を行っている。著書に『伝承農法を活かす家庭菜園の科学』(講談社ブルーバックス)、『農薬に頼らない家庭菜園コンパニオンプランツ』(家の光)など多数。

木嶋利男・著
『「育つ土」を作る家庭菜園の科学 有機物や堆肥をどう活かすか』
講談社ブルーバックス/税抜価格:860円

野菜の生育に大きな影響を及ぼすのが「土」。作物の出来は土によるところが大きい。家庭菜園で野菜が育つ土とは何かを考える。

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