[陸上]
白戸太朗「ベテランランナーこそホノルルマラソン!?」

スポーツコミュニケーションズ

 速く走ること以外の魅力

 ホノルルで雨が降ると、必ず虹が顔を見せる。頻繁に雨が降った今年の大会中は何度も素晴らしい虹に遭遇することができた。1度は自分が行く道の先から虹が始まっているのを見ることができて、周囲のランナーとともに感動したこともあった。こんな素晴らしいロケーションで行われるのもこのマラソンの魅力。人も素晴らしいが、やはりロケーションの素晴らしさも、なかなか他では真似できないものだ。

 今回、私が担当しているツアーの中に、83歳の男性参加者がいた。1人でツアーに参加し、42.195㎞を9時間でフィニッシュ。「いやぁ、9時間もかかってはダメですね。次回は8時間台で!」などと言って、そのまま夕方には街に出かけていったのだから驚きだ。さらには出発前に足を怪我してしまい、松葉杖でスタートし、そのまま10時間歩き通した男性もいた。松葉杖の経験のある人ならその大変さを理解できると思うが、僕にはとても真似はできない。女性では80歳の人もいた。失礼ながら腰が曲がっていて、とてもマラソンをするようには見えないのだが、なんと10時間超でフィニッシュ。ちなみにツアーの中で最終フィニッシュは12時間だった。

 この人たちは、制限時間の厳しい日本国内のマラソンではとても完走できない。国内では長い大会でも7時間程度。8時間を超えるような人が参加できる大会はほぼ皆無だ。つまりホノルルがなければ、83歳の男性も、80歳の女性もフルマラソン完走という目標を作ることさえできなかった。ホノルルがあったからこそ、日々頑張ることができたのだろう。そして、そんな人たちの頑張りを目の前で見ることができるのも、この大会の素晴らしいところだと思うのだ。

 マラソンに取り組んでいる人は、すぐにタイムの話になり、持ちタイムで人間関係のヒエラルキーをつくるような傾向がある。もちろん「タイム」という大きな目標があるのはいいが、それだけでは必ずどこかで行きづまってしまう。速く走ること以外にマラソンの喜びを見出すことは、長く続けるためには大切なこと。そういう意味で、ホノルルは絶好の機会かもしれない。地元の人々とのふれ合い、自然を感じながら走る喜び、通常のマラソン大会では見ることのない人々の挑戦する姿……。マラソンを走ることができる幸せ、マラソンを通して見えるもの、そんなことを感じてもらえるのではないかと。

 タイムを競うことと、旅のように五感を刺激し、感じながら走るのも、どちらもマラソンの醍醐味。記録ではなく記憶に残すことのできるという点でホノルルマラソンは最適なのではないか。そんなことをホノルルに架かる虹を見ながら考えていた。

 さて、あなたにとって「マラソン」ってなんですか?

<白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール>
 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための新会社「株式会社アスロニア」の代表取締役に就任。昨年1月に石田淳氏との共著で『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)を出版。
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