アメリカは世界最大のインターネット放送市場、そこでソニーの新たな挑戦が始まった。
大手映画スタジオを傘下に持つソニー・グループは11月からゲーム端末PS3、PS4を対象にしたネット放送の実験を開始した。米国ではネットフリックスやフールー、ユーチューブなどのオンディマンド放送が大きな収益をあげ、CATVや衛星TV放送と激しい競争を展開している。ソニーは、世界最大の激戦市場をどうやって攻略するのか。今回は米ネット放送市場を俯瞰しながらソニーの挑戦を追ってみたい。
ソニーがネット放送への参入を表明したのは14年1月にラスベガスで開催されたCES(国際家電見本市)だった。基調講演に立ったソニーの平井一夫社長は、テレビやゲーム端末、スマートフォンなど様々な同社製品を対象にストリーミング・ゲームやテレビ番組のオンライン配信を進める計画を明らかにした。その公約通りソニーは実験とはいえ「年内」にサービスを開始した。
11月13日に発表されたPlayStation Vueは、PS3、PS4を対象としたブロードバンドCATVサービス。現在はニューヨーク地域の招待者のみを対象とし、CBS、Viacom、Scripps Networks Interactive、NBCUniversal、Fox、Discovery Communicationsなどの有名チャンネルを含む75チャンネルで構成されている。同サービスには見逃し視聴やクラウドDVR(28日間保存可能)も含まれている。
開始時点として75チャンネルは少なくないが、ABC、ESPN、HBO、TBS、CNN、TNTなどの人気チャンネルが入っていないことは、今後の課題だ。北米におけるPS3およびPS4の利用者は約3500万で、18~35歳がメインユーザーとなっている。もし、そのうちの10%、350万加入を取ることができれば中堅CATVの規模になる。
ソニーは15年第1四半期にフィラデルフィア、シカゴ、ロサンゼルスへの拡大を計画しており、最終的に全米サービスを狙っている。米国のメディアでは、ソニーがオンライン放送で本格的に戦いを挑んでくると注目している。