【対談前編:「これからのコンテンツの可能性は『長さ』と『深さ』にある。そしてスマホユーザーの感情を震わせたい」】
谷口: イケダさんは、最近のバイラル動画についてどう思いますか?
イケダ: 海外の動画をキュレーションするメディアが多いなか、どのようにオリジナル動画を制作していくのかは気になります。たとえば、YouTuberを見ていても特定のフォーマット以外はまだ出ていないので、今後、どのような新しい動画の文法が出てくるのか楽しみです。谷口さんは、オンラインメディア業界の課題をどのようにとらえていますか?
谷口: やはり、 コンテンツ制作にお金が回らないという問題ですね。また、今後はリーチを増やすことにトライしていきたいと思っています。たとえば、「そうだ 京都、行こう。」のような普遍的なメッセージは、リーチがないと効果的ではありません。もしリーチがあったとしたら、私のような奇抜なことやってもしょうがない。私が今やってるのはゲリラ戦法のようなもので、リーチが狭い場合の戦い方です。リーチが広がることで表現も変わると思います。プラットフォームのリーチ拡大とそれに応じた柔らかいコンテンツの効果を試したいです。それが今後の課題です。
イケダ: たしかにウェブではまだ、「そうだ 京都、行こう。」みたいなのはできないですよね。そういうものは結局、LINEやYahoo!ニュースなど大メディアに紐づいたコンテンツになる気がしています。
谷口: 私はネットがもっと影響力をもったほうがいいと考えています。10年以上前には、すぐにテレビを抜くと思ったんですが、時間かかりますね(笑)。ネットがもっとパワーをもって、空気を変えるくらいじゃないと未来がないと思います。
小川: 谷口さんのタイアップ記事に対する反応を見ると、「これ、広告だったのか」というものがあります。既存のフリーペーパーや雑誌にも多くのタイアップ記事が占めていたり、テレビ番組についても企業提供はふつうのことですが、なぜネットだと広告に対する嫌悪感が生まれているんでしょうか?
谷口: あれは、 PCユーザーの生き残りだと思っています。つまり、自分が書き手として、人の読み物を読んでいるということです。PCユーザーが書き手目線でコンテンツを読む一方で、スマホユーザーは完全に読み手意識でかなり素直に読みます。PCユーザーが嫌うフィクションや妄想話も大丈夫です。
ずっとマスメディアに接していた人がスマホユーザーになりつつある境目のいま、チャンスがあると考えています。これまでオンラインメディアはPCユーザーの文化でコンテンツをつくってきました。そこを切り替える必要があると思います。スマホユーザーはタイアップ記事かどうかをあまり気にしないので、ちゃんとおもしろいものをつくるだけです。
また、広告と組み合わせるコンテンツは事実よりもフィクションのほうがいいと考えています。PC受けするリアリティをともなうものをつくろうとすると幅が狭まって、広告とかみ合わせが悪くなります。一方で、フィクションすぎるとスベりやすいので、両方かけ合わせることができたら一番いいのではないかと思っています。PCユーザーがフィクションやタイアップはイタいと思っているうちに、パイをとってしまえという考えです。
イケダ: 職人的な考えですね。