私だけが知っている「羽生結弦の真実」ブライアン・オーサーが明かした

読めば読むほど、なるほど。
週刊現代 プロフィール

初めて見たときの印象は、とても才能があるが自分をコントロールできていない、というものです。ステップやつなぎでミスをする甘さがあった。悪く言えば雑、よく言えばワイルドでしたね。

それでも私は、前述のとおり、彼のスピリットに心を打たれた。ユヅルはスケートに情熱を持っていて、滑ってジャンプすることが大好きなんだと、ひと目でわかりましたよ。

私は、マンツーマンでつきっきりで指導するということはしません。振り付け、スケーティング、ジャンプなど、それぞれに長けたコーチたちと一緒に、「チーム・ブライアン」を組んで、細かな指導は各分野のスペシャリストに任せているのです。もちろん私が直接指導にあたる場面も多々ありますが、あくまで私はチームの指揮をとり、責任を取る存在に過ぎません。

そのチーム・ブライアンでは、新しい選手が来た場合、必ず基礎トレーニングから始めます。ユヅルのようなトップスケーターでも、それは例外ではない。

 

彼は面食らったかもしれません。オリンピックまで2年しかないなか、ジャンプを教えてもらおうと思ってはるばるやって来たのに、基礎的な指導が始まったわけですからね。

それでも、ユヅルにはそれが必要でした。というのも、彼はスケーティングが未熟で、それが体力のロスにつながっていたからです。ユヅルはひとつのジャンプが終わると、蹴って蹴って、漕いで漕いで、次のジャンプをしていました。動きがぎこちないために、バランスが崩れ、その分ジャンプやスピンに移る際に、余分な力が加わってしまっていたんです。

ただ、基礎トレーニングの重要性を伝えると、「僕はこの反復練習をします。時間をかけて取り組みます」とすぐに納得してくれた。そういう素直なところも、ユヅルの美徳ですね。

我々のもとで卓抜したスケーティングを身につけた後は、スイスイと移動し、スムーズにジャンプできるようになりました。喘息持ちで、スタミナに課題があったユヅルはこうして、ムダな筋力トレーニングや有酸素運動をすることなく、プログラムをやり通せるようになったのです。

少年が大人になった

そして、技術力が上がったことは、精神面での成長にもつながりました。

よくメンタル面を鍛えることが、トップスケーターをさらに上のレベルへ導く、と主張する人がいます。しかし私は、そうは思いません。技術的なトレーニングこそが、選手の精神力を強くする。それが我々チームの共通認識です。

スケートが上手くなっていると自覚できれば、選手は自信をつける。その証拠に、我々のもとで徹底的に基礎トレーニングを積んだユヅルは、「普段通りにやれば必ず勝てる」と思えるようになりました。