勝とうが負けようが何も変わらないーーかくあるべし 藤田寛之「男が惚れる」人生とゴルフ

週刊現代 プロフィール

「彼は結果に、一喜一憂することがない。結果より過程、一打一打、やるべきことができたか、を重視しているのでしょう。ただ他の選手からすれば余裕があるように見えるから嫌でしょうね」(芹澤)

変わらないことを武器にしてきた藤田だが、ベテランになって変わったことがある。若手への思いを口にするようになったのだ。今年9月に逆転優勝した際、こんな言葉を残している。

「若手にいい選手はたくさんいる。しかし、技術的にはうまいかもしれないが、自分のようなおじさんゴルファーが年間3勝もしている日本のゴルフツアーはどうなのか。このことは、あえて声を大にして言いたい」

世界標準では、ツアー中に40代が多くの優勝を手にする国など考えられない、というのだ。

「正直に言うと、日本と世界とでは明らかに差がある。松山くんは時々、弱音を吐くような発言が指摘を受けるが、世界レベルで物事を考えている証拠でもある。辛い思いをし続けても、海外で経験を積む選手が増えないと日本のゴルフ界はダメだと思う」

後輩に対しては「背中で語る」タイプの藤田だが、日本のゴルフ界を憂う気持ちは強い。それは後輩たちにも伝わっている。石川遼は、本誌の取材に対し、藤田について次のように語った。

「一番すごいなと思うのは、妥協をしないこと。試合だと自信に満ちあふれているけれども、練習中はまったく自分のことを認めていない。『もっと、もっとうまくなれる』と考えながら取り組んでいることがものすごくわかるし、『今日は(練習を)このぐらいにしておこう』というラインがとてつもなく高い。自分もそこを目指さないと」

常に驕らず、高ぶらず

ゴルフでは師のアドバイスに素直に耳を傾ける藤田も、生き方は頑固そのものである。

「普通、あれだけのシード選手になると、東京や大阪、名古屋などの都会に住みますが、藤田さんは、所属している静岡県の葛城ゴルフ倶楽部の近くに住んでいる。シードを獲るとゴルフ場に所属しているのがバカらしくなって独立するものですが、藤田さんはずっと所属のままです」(前出・横田)

藤田は、偉ぶらず先輩風を吹かせることもないので人望が厚く、選手会長に推薦される。が、これも頑として引き受けない。

「東京の近郊に住んでいてフットワークよく動ける人がなるべきだ。僕は静岡なのでかえって迷惑をかけてしまう」

というのが断りの理由。中途半端なことはできないという、藤田のもつ実直さを示す一面だ。