教授や友人と食事を共にし、社交性と教養を磨く「フォーマルディナー」の魅力

オックスブリッジ卒業生100人委員会

フォーマルホールに入ってから

ホールに入って着席した後、給仕が銅鑼(ゴング)を鳴らすと、教授たちが入室する。そのとき、ホールにいる人たちは全員、「ハイテーブル」と呼ばれる一段高くなったテーブルの場所にいる教授を立って迎える。そして、そのカレッジの前年の成績上位の学生が「グレース」と呼ばれるラテン語のお祈りを唱え、その祈りが終わると、全員が一斉に着席し、食事が始まる。

食事は前菜、メイン、デザートの順に給仕が運んで来る(写真3-5)。カレッジによっては、給仕がメインの肉や魚を一人ずつ盛った後に、テーブルの中央にポテトやニンジン、ブロッコリーなどの野菜が盛られた大皿を置き、参加者自身が自分の好みの量に合わせて野菜を盛り付けるという場合もある。

(写真3)ニューナムカレッジの前菜〜ピーマンとトマトのサラダ〜
(写真4)セントジョンズカレッジのメイン〜ステーキ、スナップエンドウ、ポテト〜
(写真5)ペンブルック・カレッジのデザート〜オレンジケーキとクロテッドクリーム〜

カレッジによって異なるフォーマルディナーだが、共通して守るべきルールもある。例えば、食事中はフラッシュ撮影禁止、携帯の電源を切る、 食事中に席を立って他のテーブルにいる人に話しにいかない・・・そして、何より重要なのは、教授が召し上がってから学生が食事を始めることだ。ある意味、日本的とも言えるかもしれない。これらはオックスブリッジだけでなく、社会でも大切なルールだと思う。

同じテーブルにいる友人と色々な話をしながら、食事を進めることで、付き合いも深まっていく。隣に座っている人と「初めまして」と言いながら会話をすることも少なくはない。他のカレッジの教授が一般席に座っていることもあり、学問の話をしていたり、教授の私生活について話していたりと、様々な光景が見られる。

フォーマルディナーの後

こうしてフォーマルディナーは大体1時間半ほどで終了する。しかし、ここで終わりではない。

教授は、学生より先に食事が出され、食べ終わるのも早いため、フォーマルディナーが終わった後、教授専用の部屋(Senior Common Room: SCR)で、食後のお茶やポートワインを楽しみながら、また討論を再開する場合もある。カレッジによるが、 実際にこの場に行くのは大学院生が多く、学部生はカレッジバーで交流を深めることが多い。カレッジにはバー(カレッジバー)があり、そこのお酒はカレッジの補助を受けているため、パブより安いのが魅力的だ。ここでは、フォーマルディナーの時に同席できなかった友人や知り合いと話したり、引き続き、夕食の際のグループで話をしたり、ビリヤードをしたりと、さらに交流を深める場となる。 どの学生たちも、周囲がうるさいので、動作や手の動きがいつも以上に激しくなっている。

こうして学生は飲み続け、話し続け、明け方に帰宅することになるが、翌朝9時の講義がある場合には、きちんと出席をする。もちろん、全員が夕食後から明け方まで話しているわけではない。「課題があるから…」とか「今晩までに課題を提出しないと…あと3時間しかない」などの理由で、夕食後、すぐに帰宅する生徒も少なくない。

テーマのあるフォーマルディナー 

年間を通じて開催されるフォーマルディナーの中で、テーマのあるフォーマルも度々ある。例えば、季節の行事に合わせたハロウィンやクリスマスフォーマルなどが例に挙げられる。ここにいくつかのフォーマルディナーを紹介する。

三つの特別なフォーマル:"Matriculation"、"Half-way"、"Graduation"

これらは、学部生にとって重要なフォーマルと言える。"Matriculation"は入学式の日にある。"Half-way"は、2年生の半ばにあり、「学位授与まで半分経過」という意味がある。そして、"Graduation"は、文字通り、卒業できることを祝う、卒業直前のフォーマルだ。テーブルを教授やチューターと囲む。入学した時にテーブルを囲んだ友人と、卒業直前のフォーマルで一緒に食事できるのは、何より嬉しい。卒業できる嬉しさと同時に、もう会えなくなるという寂しさも同時に味わう。入学した時の緊張感や希望で一杯だった当時の自分自身を思い出し、もう論文からは解放される嬉しさと複雑な思いを皆が抱くのも、一生懸命に学生時代を過ごしたからかもしれない。