「非モテ」や「自分らしさ」を受け入れてくれた雑誌『オリーブ』をいま振り返る~『オリーブの罠』著者・酒井順子さんインタビュー

酒井 順子

他の少女雑誌って、ツッパリ少女向けの『ギャルズライフ』を除けば、「少女だから、この程度でいいだろう」っていう教育的な観点があったと思うんですけれど、『オリーブ』は少女達に、「もっと殻を破りなさい、自分が着たい服を着なさい」と繰り返し言い続けていたんですよね。

いまの女子高生を見ていると、わりと現状に満足している子が多いような気がするんです。規制を打ち破りたいとか親に反抗したいという気持ちが薄くて、そんな面倒くさいことはせずに、とりあえずチェックのスカートとハイソックスを穿いてればいいやっていう感じ。

一方で、『オリーブ』が創刊された80年代当時は「ツッパリ」文化が猛威をふるっていましたし、まだまだ世の中全部がダサかったじゃないですか。やってはいけないこともいっぱいありましたから、女子高生達は「今ここ」ではない何処か、別の違うところに行きたかったんです。そんな「憧れたい」という欲求をうまく引き出してくれたのが『オリーブ』だったような気がします。「憧れさせる力」を持っていたんですね。

――そんな、熱狂的に愛された『オリーブ』はなぜ休刊してしまったのでしょうか?

酒井 ギャル文化に駆逐されたんだ、っていうことを、やはり今回あらためて実感しました。すでに日本の景気は悪くなっていたけれど、ガングロとかヤマンバとかそういうどぎついギャルが渋谷に出始めて、結局、わかりやすくて大衆に受け入れられやすいヤンキー文化に、『オリーブ』の清くて知的な文化は呑み込まれてしまったんだなという感じがします。

バブルの時代に、ナチュラル路線とかっていうのは、かえって新しくて良かったんだけれども、もう一回、別のどぎつい文化が来たときに負けてしまったのかな、と。

――ここにきて再び、『オリーブ』周辺が盛り上がっているのは、やっぱり「振り返る」ことから得られる癒し目的というか、懐古趣味なのでしょうか?

酒井 オリーブ少女達はいま中年真っ盛りですからね。同窓会欲求というものは中年になると強まってくるように、反芻する快感を味わいたくなるお年頃なのでしょう。それに、オリーブ少女って、自分が着たい服を着るとか、したいことをするっていう「自由」に、すごく一生懸命な少女達だったと思うんです。

でも、大人になるにつれて、仕事や結婚、子育てとかで、いろいろな縛りや制約を受けざるをえなくなってくる。『オリーブ』に熱中した自由な少女時代、何かに憧れるばかりの恥ずかしい時代でもあったけれど、まだまだ広大な未来が広がっていて元気いっぱいに頑張っていた頃を思い出すと、おおいに励まされるということもあるのではないでしょうか。

――ちなみに、本の中で「オリーブ少女に共通するにおいは、わかります」と書かれていますが、具体的にどういうところで元オリーブ少女を判別できるのですか?

酒井 まず、色気はないですよね(笑)。少なくとも、(色気)ムンムンっていう人は、元オリーブ少女ではありません。さらに90年代オリーブ少女になると、生成り、天然、ナチュラルな、あっさり感みたいなものが目立ってきます。とはいえ、みんなそれぞれに色気はないけれど、恋愛とか結婚をちゃんとしたりもしている。実際にモテたのか非モテなのかということではなく、赤文字系雑誌に象徴されるモテ文化の対極にある文化で生きてきた女性達のかな、と思います。

――そんな、元オリーブ少女、って、「いい人」が多いんですかね?

酒井 いえ、私は必ずしもそうではないと思うんですよ。いい人に見えるけど、実はちゃんとメスだし、髪をグリグリ巻いたりはしていないけれど、ちゃんと女は女だという・・・・・・。

――うわー、たしかに赤文字系の人達よりよっぽどめんどくさそうですねぇ・・・・・・!(とかいいつつ、聞き手も実は元オリーブ少女)

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酒井順子(さかい じゅんこ)

エッセイスト。1966年東京都生まれ。立教大学卒業。2004年『負け犬の遠吠え』(講談社)で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。『ユーミンの罪』(講談社現代新書)、『地震と独身』(新潮社)、『女を観る歌舞伎』(文藝春秋)、『泣いたの、バレた?』(講談社)など著書多数。

酒井順子・著
『オリーブの罠』
講談社現代新書/定価:800円(税別)

マーガレット酒井先生復活!
「元オリーブ少女&少年の面接時間」全4回を収録

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私は長年エッセイを書く仕事をしており、今までに様々な雑誌に連載をしてきました。が、読者の方々が、かつて連載していた雑誌の名前を出して「読んでました」と言って下さるのは、この『オリーブ』が断然トップ。それほど『オリーブ』は、我々世代にとって印象的で、かつ熱狂的に愛された雑誌だったのです。そして私は、執筆者であると同時に、『オリーブ』の愛読者でもありました。今でも覚えているのは、『オリーブ』の発売日。月に二回(中略)、三日と十八日に発売される『オリーブ』を、女子高生であった私はどれほど楽しみにしていたことでしょうか。雑誌の発売日を心待ちにするという気持ちは、あの『オリーブ』との蜜月以降は、感じたことはないものかも。(序章「オリーブ誕生」より)

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<本書の内容>
序章 『オリーブ』誕生

第一章 オリーブ伝説の始まり
1 一九八三年の大転換 2 ターゲットは女子高生

第二章 リセエンヌ登場
1 オリーブ少女とツッパリ少女 2 リセエンヌ宣言

第三章 『オリーブ』と格差社会
1 付属校カルチャー 2 八〇年代の格差 3 アイコン、栗尾美恵子さん

第四章 『オリーブ』とファッション
1 おしゃれ中毒 2 コスプレおめかし

第五章 オリーブ少女の恋愛能力
1 非モテの源流『アンアン』 2「聖少女」願望 3 オリーブ少女の男女交際

第六章 オリーブ少女の未来=現在
1 『オリーブ』の教え 2 オリーブ少女の職業観 3 オリーブチルドレン

終章 オリーブの罠