[裏方NAVI]
川北元(全日本女子バレーボールチーム戦術・戦略コーチ)<前編>「既成概念破りの“ハイブリッド6”」

スポーツコミュニケーションズ

“ポジション”ではなく“能力”をいかす考え方

 さて、「ハイブリッド6」は、現状では結果的にミドルブロッカーが1枚ないしはゼロのかたちをとっているため、そのことが注目されがちだが、「ミドルが減った、ウィングが増えた」という考え方は、実はこのシステムを理解するうえではそぐわない。「ハイブリッド6」は、ウィング(サイド)、ミドル(センター)といった、ポジションの既定概念を取っ払ったうえで、どの選手をどこのポジションに置き、どう動かすことで、チームが機能するか、ということに焦点が当てられて導き出されたシステムだからだ。つまり、「ポジション」で考えるのではなく、「選手の能力」を引き出そうという意図によって、役割が決められている。

 川北は言う。
「“混ぜ合わせる”という意味の“ハイブリッド”という名称の通り、従来のウィング、ミドルそれぞれの役割を混ぜ合わせているんです。だから、ウィングも少し後ろに下がって、バックアタックのようなかたちでフロントでも打つし、そのままセンターエリアでブロックもする。また、ミドルでもサイドからアタックをするし、時にはそのままサイドでブロックをする。ポジションにとらわれることなく、選手たちの能力を最大限に引き出せるように配置したのが“ハイブリッド6”なんです」

 では、「ハイブリッド6」によって、日本の攻撃力はどう高められたのか。それは、得点力の分散である。従来のように、1人や2人のエースに頼るのではなく、(セッターを除いた)コート上の5人全員が平均的に得点を取ることができれば、相手チームにとってこれほど嫌なものはない。これまでは両ウィングに対して注意を払ってさえいれば良かったのが、5つのポジションすべてにアンテナを張り巡らさなければならないからだ。また、自分たちにとって、体力の消耗を減らすことができるというメリットもある。この「ハイブリッド6」によって、早速もたらされたのが、今年8月に行なわれたワールドグランプリで獲得した銀メダルだったのである。

(後編につづく)

川北元(かわきた・げん)
1976年、東京都生まれ。順天堂大学バレーボール部で活躍。同大学大学院卒業後の2001年、コーチングを学ぶために単身渡米する。現地の大学や米国女子代表チームで分析や指導を行ない、08年には北京五輪で米国女子代表チームの銀メダル獲得に貢献した。同年、眞鍋政義現全日本女子チーム監督からの誘いで、久光製薬のコーチ兼通訳となる。09年からは眞鍋監督の下、全日本女子チームの戦術・戦略コーチを務め、現在に至る。

(斎藤寿子)

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